中小企業庁発表の2018年版『中小企業白書』によると、2015年時点の経営者の年齢層で最も多いのは65歳~69歳となっており、経営者の高齢化が進んでいます。経営者のなかには一代で企業を拡大した人も多く、できれば自分の子どもに事業承継させたいと考えている人も多いでしょう。
今回は、わが子(親族)に事業承継をする3つの方法をご紹介します。
(1)贈与による事業承継
経営者が生前贈与で後継者に株式を贈与する方法です。自分が生きている間に事業承継が進んでいくため、安心して引退できるというメリットがあります。毎年一定額までの贈与が非課税になる『暦年贈与』制度を活用すれば、ある程度贈与税を抑えながら事業承継を進めることもできるでしょう。
ただし、贈与財産を相続時の遺産分割に含む場合は、ほかの相続人から「後継者だけ特別に利益を得ている」などと思われて相続時に揉めたり、ほかの相続人から遺留分(相続人が民法上最低限相続できる財産)を請求されたりする可能性が出てきます。そのためこのケースでは、将来の相続を考慮に入れながら事業承継を進めていく必要があります。
(2)相続による事業承継
経営者が遺言書を残して株式を後継者に渡す方法です。税金面でいえば、相続税は贈与税に比べて基礎控除額が大きく、税率も低いため、節税という面では生前贈与よりも適した方法といえます。
一方、現経営者が生きている間にしっかり話し合っておかなければ、遺された相続人の間でもめ事に発展する可能性があります。たとえば、現経営者が事業に必要な資産を個人所有していた合、それらが経営に関係のない相続人に相続されてしまうおそれがあります。このほか遺留分の問題もあるため、現経営者が生きている間に、相続人を集めて事業承継について十分な話し合いをしておく必要があるでしょう。
(3)売買による事業承継
遺留分と税金という2つの問題を解消できるのが、後継者に株式を買い取ってもらう方法です。この方法であれば、贈与税・相続税ともにかかりませんし、遺留分の問題も発生しません。
ただし、後継者は株式を買い取るための資金が必要となりますし、経営者側のほうは、株式売却による譲渡所得が発生した場合、譲渡所得に課税されるといった面もあります。『贈与』『相続』『売買』のいずれの方法にもメリットとデメリットがあります。のちにトラブルに発展しないよう、後継者や相続人と話し合いながら、後悔のない事業承継を進めてください。
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