個人事業主も事業を承継しやすくなる 『個人版事業承継税制』とは?

次世代経営者への事業承継が問題となるのは法人だけではなく、個人事業主であっても同じです。
これまでは事業承継の贈与税や相続税の猶予・免除の対象となるのは法人のみでした。ところが、2019年の税制改正によって、個人事業主についても贈与税や相続税の猶予・免税制度が創設されました。今回はその制度の内容について解説していきます。

納税負担が減る
『個人版事業承継税制』

事業承継では、店舗や設備、商品などを受け継ぐことになりますが、基本的に相続であれば相続税、贈与であれば贈与税の対象となります。

しかし、個人版事業承継税制では事業承継にかかる贈与税や相続税の納税が猶予されます。そのため、承継時の不安定な時期に、納税で資産を減らさずに済むわけです。さらに、先代事業者・後継者の死亡や法的な破産などの事情が生じれば、猶予されている贈与税や相続税は免除されます。

法人の事業承継の場合は経営者が交代します。しかし、個人事業主の事業承継の場合は手続き的には『先代事業者が廃業し、後継者が開業すること』になります。また、事業承継で問題となりやすい屋号の承継については、元経営者が自身の屋号を商号登記していない限りは特に制限はありません。

納税の猶予・免除が
適用されるための要件とは?

相続税や贈与税の猶予や免除は、以下にあげる事実が主な前提条件になります。

●贈与の場合は、贈与の日まで3年以上事業に従事していること
●相続の場合は、相続開始の直前に事業に従事していること
●贈与税の申告期限までに開業届を出しており青色申告の承認も受けていること
●先代事業者が青色申告の承認を受けていること

事業を廃止したり青色申告の承認が取り消されたりした場合は、免除にならず、贈与税や相続税の全額に利子税を加えた額を納付しなければなりません。また、この制度は2028年12月31日までの時限措置のため、早めの対策が必要です。

相続税や贈与税が猶予・免税となると、事業を受け継ぎやすくなります。ぜひ制度を活用していきましょう。