空き家特例改正で、 老人ホーム入居も特例の対象に

相続人が被相続人の住居を売却して一定の要件に当てはまる場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除される制度『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』、通称『空き家特例』。これまでは被相続人が老人ホームに入居した場合には適用外でしたが、2019年の改正で老人ホーム入居も特例対象となりました。具体的な変更点をご紹介します。

2019年の税制改正で
見直された『空き家特例』

近年の少子化や人口減少により、避けられない問題が空き家の増加です。持ち家に一人暮らしをしていた被相続人が亡くなるなどして、その家の相続や処分が行われないまま空き家として放置されると、家屋の倒壊や地域の治安悪化にもつながります。2016年に創設した『空き家特例』は、そのような事態を防ぎ、相続や処分がスムーズに行われることを推進するための特例制度です。
具体的には、1981年5月31日までに建てられた家が被相続人が亡くなって空き家となった場合、相続人が耐震リフォームをして新耐震基準に適合させるか、もしくは家を取り壊して更地にして売却すると、譲渡所得から3,000万円が控除されるというものです。
従来の空き家特例では、要件として『相続開始の直前に被相続人が住居として使用していたこと』が求められました。そのため、被相続人が住んでいた家を出て老人ホームに入居し、そこで死亡した場合などは、この要件を満たさないために譲渡所得の控除が受けられないことが問題となっていました。
この点をふまえて行われた2019年の税制改正により、被相続人が住んでいた家を離れて老人ホームに入居してから月日が経過した場合でも、一定の要件を満たせば特例を受けられるようになりました。

空き家特例が
適用にならないケースも

現在、被相続人が老人ホームに入居していた場合に、相続人が空き家特例を受けるためには下記の要件等があります。

●被相続人が要介護・要支援認定などを受けていた
●老人ホーム入居直前まで対象となる自宅に一人で住んでいた
●老人ホームに入居してからも、被相続人の物品等を保管している
●被相続人が老人ホームに入った後に第三者が居住および事業として利用していない

しかし、それでも空き家特例の要件を満たさないケースがあります。たとえば、被相続人が老人ホームではなく子どもの家に移ったり、子どもの家に移った後で老人ホームに入居した場合には
空き家特例は適用されません。また、家屋のリフォームや取り壊しについては、譲渡前に行った場合のみに空き家特例が適用されますので、注意が必要です。

親族が持ち家で一人暮らしをしている場合、早めに話し合いをして対策を立てておきましょう。