賃貸物件から家賃収入を得て資産を形成している人も多くいますが、賃貸物件が個人所有である場合、相続対策として法人所有にしてみるのも一つの手です。
ただし、法人化にあたっては注意するべき点もあります。そこで今回は、賃貸物件を法人化することで得られるメリット、デメリットについて紹介します。
法人所有にすることで変わることとは?
収益を上げている賃貸物件を個人所有から法人所有にすることで、何がどう変わるのでしょうか。
●相続税が圧縮されて、納税額が下がる可能性もあり
賃貸物件が相続財産から外れることになります。
その結果、相続税も圧縮できるというメリットがあります。
また、個人所有の場合は所得税+住民税が最大55%の課税ですが、法人所有に変われば、法人税が最大34.59%(東京都の場合)の課税となり、納税額が下がる可能性があります。
一方で、法人を設立するためには費用がかかりますし、設立後は、赤字であったとしても毎年最低7万円程度の法人住民税を払わなければなりません。
●家賃収入を役員報酬や給与として子どもたちに渡すことが可能
賃貸物件を個人が所有している場合、家賃収入を子どもたちに移すと贈与税がかかることがあります。
しかし、法人化しておけば法人の収益となります。さらに子どもたちを法人の役員や従業員にし、報酬や給与を支払う形にしておけば、勤務実態が求められますが、家賃収入に相当する額を贈与税の負担なく子どもたちに分配することが可能になります。
ただ、基本的に役員報酬や給与の金額はあらかじめ定めておかなければなりません。
一方で、賃貸収入は安定しているわけではなく、空室数や修繕のタイミングなどによって収益にばらつきが出てきます。
また、法人になると決算も複雑になるため税理士費用といったコストがかかります。
そうすると、結果として当初想定していた額ほどは子どもたちに残せない可能性も出てきます。
相続税の節税対策につながる可能性のある賃貸不動産を法人化。
その一方で、法人化することで個人の譲渡所得税がかかるほか、売買の場合は法人は資金調達をする必要があります。
また、売買の場合は賃貸物件の代わりに売買代金が相続財産となりますが、評価方法の違いにより一時的には相続税が上がる傾向もあります。
法人化した後で後悔することのないよう、メリットだけでなくデメリットもしっかりと認識しておく必要
があるでしょう。
被相続人の財産を子どもの配偶者に相続させるためには、さまざまな方法があります。
その一つに、子どもの配偶者と被相続人が養子縁組をする方法があげられますが、養子縁組にはメリットもあればデメリットもあります。
そこで今回は、子どもの配偶者と養子縁組をする前に押さえておきたいことを紹介します。
養子縁組のメリットとデメリットとは?
養子縁組には、次のようなメリットがあります。
●基礎控除額が増えるため、相続税の節税につながる
養子縁組をすることによって法定相続人が増えるため、基礎控除の額も増えることになります。
また、生命保険の非課税枠などの基礎控除以外の控除額も増えるため、相続税を抑えることが可能です。
●子どもの配偶者は実親の法定相続人にもなれる
養子縁組した配偶者にとってもメリットがあります。
養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、基本的に子どもの配偶者が養子縁組をする場合は普通養子縁組となります。
普通養子縁組の場合、実親とも法律上の親子関係が継続するため、子どもの配偶者は実親の法定相続人にもなれるというメリットがあります。
一方、養子縁組には、次のようなデメリットがあります。
●離縁がむずかしい
養子縁組を解消するためには『養子離縁届』を行政に提出しなければなりません。
話し合って離縁することに合意できなければ、調停や裁判になることもあります。
●ほかの相続人との争いが起こる
相続税算定の場合の『法定相続人の数』に認定される養子縁組は、養親に実子がいる場合は1人のみ、実子がいない場合は2人のみとなっています。
そのため、ほかの相続人が「なぜこの人だけ養子縁組をするのか」と不公平感を抱く可能性があります。
ほかの相続人との争いの火種になりかねません。
●子どもの配偶者の親族に財産が渡る可能性がある
子どもの配偶者を養子縁組した場合、ほかの相続人たちと同じく法定相続人の権利を得ることになります。
もしそこで子どもの配偶者が不動産などの財産を相続した場合、子どもの配偶者が亡くなったときの相続人の状況によっては子どもの配偶者側の親族にその財産が渡ることになります。
子どもの配偶者を養子縁組することにはメリットもありますが、後々のトラブルにつながる可能性が高いことも否定できません。
被相続人の財産を子どもの配偶者に相続させるためには、養子縁組のほかにも、遺言書、特別寄与料、贈与などさまざまな方法も選ぶことができます。
どの方法がベストなのか、慎重に判断することが求められます。
相続税対策として贈与制度を活用している人は多いでしょう。
しかし、相続人に財産を贈与してから3年以内に贈与者が亡くなってしまった場合、その財産は相続財産と見なされてしまうのです。
今回は、『3年以内の贈与』にかかる相続税と贈与制度を使うときの注意点をお伝えしていきます。
『3年以内の贈与』に相続税がかかる場合とは?
年間110万円以下の贈与を行う暦年贈与の場合、基礎控除内で収まるため、相続税がかかることはありません。
しかし、たとえば、相続開始前3年間のうちに110万円ずつを暦年贈与していた場合、その330万円は相続税の対象になってしまいます。
また、直系尊属から教育資金の一括贈与や住宅取得等資金の贈与などを受ける場合には非課税枠が大きくなりますが、この場合も相続開始3年以内の贈与になれば、非課税枠を超えた額については相続税の対象となります。
ただし、この『3年以内の贈与』の対象となるのは法定相続人のみです。
孫や相続人の配偶者に対する贈与については、相続開始から3年以内の贈与であったとしても相続財産として加算されません。
相続税対策として贈与制度を使うときの注意点
一人に対する贈与であれば相続税の基礎控除内に収まる可能性も高まりますが、子どもが複数いる場合などは、暦年贈与だけでも額が大きくなる可能性があるので注意が必要です。
『3年以内の贈与』の対象となり、相続税を加算されないようにするためには、早い時期から贈与を始めておくことが一番の対策です。
また、万が一相続財産に含まれてもいいように、相続税の基礎控除を意識して贈与を計画しておくのも一つの方法といえます。
相続対策のために生前贈与を活用していても、突然の相続が起きる可能性はゼロではありません。
相続対策を行うときには、『3年以内の贈与』も注意する必要があるでしょう。