年間110万円までの贈与であれば贈与税が非課税となる暦年贈与制度。
そのため、相続税対策として活用している方も多いのではないでしょうか。
しかし、暦年贈与制度の活用方法を誤ると、名義預金と見なされ相続税が課税されてしまうこともあるので注意が必要です。
そこで、どういった場合に相続税が課税されるのか、そのケースと対策を紹介していきます。
贈与と認められないケースとは?
自分が先立った後、妻が生活に困らないように、妻の預金口座に少しずつ自分のお金を移しておく。
孫の将来のために、孫の名前で預金口座を作って、自分のお金を移しておく。
相続税対策として、このようなことを行っている人も多いのではないでしょうか。
なぜなら、年間110万円までの生前贈与であれば、贈与税がかからないからです。
しかし、その預金口座を妻や孫が管理できていない状態だと、被相続人の財産であると見なされてしまいます。
こうした預金を名義預金(名義にかかわらず、被相続人の財産と見なされる預金)といいます。
名義預金と見なされてしまうと、贈与とは認められません。
そのため、相続税がかかることになってしまいます。
名義預金と見なされる可能性が高いケースとしては、以下があげられます。
●自分の口座にお金が入っていることを、預金の名義人が知らない
●預金の名義人ではなく、被相続人が預金通帳や銀行印などを所有しており、預金の名義人が財産を処分することができない
名義預金と見なされないためのポイントとは?
贈与を名義預金だと見なされないためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
●預金の名義人が通帳や銀行印を所有しており、財産を自由に処分できる状況にある
●預金名義人が贈与を受けていることを知っている
●財産の移転ごとに贈与契約書が作られており、その都度自署されている
●受贈者と贈与者で同じ契約書の印鑑を使わない以上の点に注意し、暦年贈与を上手に活用して相続税対策を行いましょう。
生命保険は『相続税の非課税枠』があり相続対策に有効です。
そればかりでなく、『被相続人の預貯金口座が凍結された』『相続税の納税資金が足りない』といった場合にも役立てることができます。
そこで、生命保険を活用することで具体的にどのようなメリットが得られるのかをみていきましょう。
相続時の問題を解決する三つのメリットとは?
生命保険には、以下のようなメリットがあります。
(1)葬儀など緊急時の費用に充てられる
被相続人が亡くなったとき、葬儀費用など早急に現金が必要となることがあります。
被相続人の預金口座や相続財産から使うことはできますが、金融機関が死亡の事実を把握すると、被相続人名義の預金口座が凍結されてしまいます。
預金口座が凍結されてしまうと、公共料金などの支払いもストップしてしまいます。
相続法の改正により、法定相続人は一定額を被相続人の口座から引き出すことが認められました。
しかし、それでは足りないこともあるかもしれません。
預金口座の凍結を解除するためには遺産分割協議が必要になるなど、手間も時間もかかります。
一方、死亡保険金は受取人が請求すればすぐに受け取ることができるため、預金口座が凍結してしまったとしても、保険金を葬儀費用などのすぐに必要な現金に充てることができるのです。
(2)非課税枠が増える
死亡保険金は、受取人を指定しておけば遺産分割の対象にはなりません。
そのため、被相続人が希望する人に財産を渡すことができます。
また、死亡保険金の受取人が相続人となっている場合は、生命保険に関しては【500万円×法定相続人】を超える部分が相続税の課税対象となります(2020年現在)。
基礎控除と合わせると非課税枠が増えるため、相続税対策としても活用できます。
(3)相続税の納税資金になる
被相続人の財産が大きければ、その分納税する相続税額も大きくなります。
相続財産に不動産が多い場合、納税のための現金が足りずに困ることがあります。
しかし死亡保険金を設定しておくことで、相続税の納税資金の準備としても活用することができます。
相続時に発生する問題を解決する一つの手段として、生命保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
自分の死後、円滑に相続が進むように準備するのが遺言書です。
遺言書は元気なうちに用意しておきたいため、早めに作成する人もいます。
しかし、あとで内容を変更したいこともあるでしょう。
そんなときはどうすればよいのでしょうか?
今回は、遺言書の撤回や変更をしたい場合の注意点について解説します。
新しい遺言書を作成すると古い遺言書の法的な効力は無効に
新しい遺言書を作成すると、古い遺言書との矛盾した箇所は法的な効力を失ってしまいます。
そのため、自筆証書遺言であれば、新しい遺言書を作成した後、古い遺言書を破棄してしまえば、それで問題ありません。
一方、公正証書遺言の場合は公証役場に原本が保管されています。
そのため、手元にある古い公正証書遺言を破棄しても、遺言が撤回されたことにはなりません。
この場合は新たに作成した遺言書に『以前の遺言書を撤回する』という文言を記載するようにします。
一部のみ変更したい場合は、すべて書き直す必要はありません。
変更したい箇所のみ記載した遺言書でも、法的な効力は発揮されます。
その際、新しい遺言書には『以前の遺言書の○○は取り消す』といった文言を加えておきましょう。
作成した遺言書が無効になる場合とは?
新しい遺言書を作成しても、その効力そのものが無効になると、古い遺言書の方が有効となります。
新しい遺言書が無効になるのは、自筆証書遺言であるのにすべてパソコンで作成したり、日付や名前などの必要な情報を書き忘れたりする場合です。
また、遺言書は、作成した本人の意思によるものでなければなりません。
たとえば、遺言書作成者が認知症で判断能力がなかったり、第三者から脅されて遺言書を作成したりした場合には、効力を持ちません。
こうした場合には、裁判所に対して遺言無効の申立を行い遺言書の効力について争うことになります。
あとで遺言書の内容を変更することはできますが、無効とならないように、注意しましょう。