ローン返済中の親が亡くなったら残債は相続人が支払うべき?

ローン返済中の親が亡くなったら残債は相続人が支払うべき?

子どもが親の財産を相続するとき、相続財産のなかに不動産が含まれていることはよくあります。

では、もしその不動産に住宅ローンの残債があった場合、相続人である子どもが返済義務を引き継ぐことになるのでしょうか。

そうなると、子どもは相続財産のローン返済に苦しむことになりかねません。

今回は、住宅ローンが残った不動産の相続について解説します。

 

住宅ローンの残債がある場合『団信』の加入有無をチェック!

相続財産のなかには、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金などのマイナスの財産も含まれます。

そのため、被相続人に住宅ローンの残債があった場合、それも相続の対象となり、相続人が返済の義務を負うことになります。

 

被相続人の返済期間にもよりますが、相続した時点でまだ多額の借金が残っていることもあります。

もし、自分にも住宅ローンがあったうえで被相続人の住宅ローンを相続するとなると、月々の支払い金額はかなり大きな負担となってしまいます。

 

しかし、必ずしも住宅ローンの残債を相続人が支払わなければならないわけではありません。

被相続人が住宅ローンを組むときに『団体信用生命保険』(以下、団信)に加入していれば、相続した時点での残りの住宅ローンの返済は不要となります。

団信とは、債務者が返済の途中で死亡、または高度障害状態などの一定の状況に陥ったときに、保険金で住宅ローンの残債が完済されるという保険です。

 

多くの金融機関では、団信に加入することを住宅ローンの契約条件に含めており、住宅ローンを組んでいる人のうち95%以上は加入しているといわれています。

被相続人が団信に加入していれば、遺族は住宅ローン返済の負担を負うことなく不動産を相続することができます。

住宅ローン残債のある不動産を相続することになったら、まずは被相続人が団信に加入していたかを確認することが大切です。

 

 

団信の加入・未加入の場合のそれぞれの手続きとは

被相続人が団信に加入していた場合は、住宅ローンを借り入れている金融機関に対して、必要書類を揃えて、保険金支払いの手続きを行います。

そして、保険金が支払われたら、抵当権抹消登記を行います。

 

もし被相続人が団信に加入しておらず、住宅ローンを相続人が相続する場合には、相続人が住宅ローンを引き継ぐ手続きを行い、不動産についている抵当権の変更登記をすることになります。

上記、抵当権の抹消登記や抵当権の変更登記の前提として、不動産の相続による所有権移転登記が必要となるので、その準備もしておくことが望ましいです。

 

なお、住宅ローン残債のようなマイナスの財産を相続したくない場合、『相続放棄』をするという選択肢もあります。

しかし、相続放棄は原則的には『一切の財産の相続権を放棄する』ということを意味するため、不動産を含めたプラスの財産も一切相続できなくなります。

相続財産をトータルで見て判断することが必要となってくるでしょう。

なお、団信は、住宅ローン以外のローンや、事業性の融資などには適用が無いのでご注意ください。

 

相続財産に不動産が含まれるときには、住宅ローンの残債があるか、団信に加入しているかを事前に確認しておくことが大切です。

加入していない場合は、相続をどうするのかを考え、生前にできる対策を考えておきましょう。

 

 

 

相続税額を算出するための相続財産の評価について

相続が始まったとき、まず行うのが相続財産の確定と相続人の確定です。

このうち、相続財産の確定においては、相続財産となるものを特定し、その評価額を算出したうえで相続税を計算する作業が発生します。

そこで今回は、『相続財産の評価』について説明します。

 

土地や建物などの不動産の評価は国税庁が定めた評価方式で

相続財産には、預貯金や不動産のほか、さまざまな種類があります。

このうち、すでに金額が明らかな現金や預貯金以外については、改めて金額を特定しなければなりません。

これを『相続財産の評価』といいます。

相続財産の評価額は、国税庁が定めた『財産評価基本通達』というルールに基づいて計算し、その『相続税評価額』を基に、相続税額を計算します。

ここでは、特に複雑な不動産や株式、保険金の相続財産の評価方法について説明します。

 

●不動産の評価方法

ほとんどの財産が相続開始時点での換金価値で相続税評価額を算出するのに対して、土地や建物は国税庁が定めた評価方式で評価を行います。

土地の場合は、路線価(その道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額)が定められている地域であれば、これを基にした『路線価方式』で計算します。

路線価は毎年7月に国税庁より公表され、公表年の1月1日から12月31日までの土地の相続税評価額に用いられます。

路線価が定められていない場合は『倍率方式』というその土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる方法で計算します。

 

また、建物の場合は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

一般的に、相続税の算出に使われる路線価は、公示地価(公共事業用地の取得価格の算定基準であり、一般の土地の取引価格の指標となる土地価格のこと)の8割程度とされており、売買価格よりも低い金額になる傾向にあります。

 

 

有価証券の評価方法と生命保険の権利の評価方法

●有価証券の評価方法

有価証券には、株式や社債、手形や投資信託の証券などが含まれます。

原則として、相続税評価額は相続開始時の時価で評価されますが、有価証券は種類により評価方法が異なります。

たとえば上場株式の場合、被相続人の死亡日の終値、課税時期の月の毎日の最終価格の平均額、課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額、課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額という4つの値を比較したうえで、最も低い金額が評価額となります。

一方、非上場株式の場合は市場価格がついていないため、過去の配当実績などから算出されます。

有価証券の算出方法は複雑なので、専門家に依頼したほうがよいでしょう。

 

●生命保険契約に関する権利の評価方法

通常、生命保険などは、加入していた生命保険を途中で解約すると、解約返戻金が戻ってきます。

それと同じように、被相続人が自分以外の人を被保険者として積立式の生命保険に加入し、死亡した場合には、加入者である被相続人が亡くなった日に解約した場合の解約返戻金に相当する額が評価額となります。

解約返戻金相当額がわからないときは、契約先である生命保険会社に問い合わせましょう。

 

相続税額を計算するうえで財産の評価はとても大事ですが、評価が難しい相続財産もあります。

手続きに時間がかかるものもありますので、早めに対策をとっておくことをおすすめします。

 

 

 

贈与と相続、何が違う?生前から考えておく節税対策

相続税の節税のために生前贈与を検討する人は多くいます。

ただし、贈与にも税金がかかるので、相続税を減らせたとしても、贈与税を含めたトータルでの支払い額が増えてしまっては意味がありません。

では、相続と贈与にはどのような違いがあるのでしょうか。

今回は改めてその基本をおさらいしましょう。

 

相続税と贈与税の『基礎控除額』の違い

娘が家を購入する際に父親が資金援助をしたり、孫の大学の学費を祖母が援助したりなど、対価を得ずに無償で誰かに財産を譲り渡すことを『贈与』といいます。

そして、個人から財産を譲り受けたときにかかる税金が、贈与税です。

 

一方、財産を譲るには相続という方法もあります。相続と贈与のどちらの節税効果が高いかについては、ケースにもよりますが、両者を比較するうえで、まず押さえておきたいのが『基礎控除の額』です。

贈与税の場合、暦年贈与の基礎控除額は毎年110 万円であるのに対し、相続税の基礎控除額は【3,000 万円+(法定相続人の数×600 万円)】と、かなり高額です。

 

 

贈与をうまく活用すれば贈与税・相続税を節税できる

これを踏まえると、贈与したい金額が相続税の基礎控除額よりも大きい場合は、生前贈与として毎年110 万円以下の金額を贈与し続ければ、贈与税がかかることなく、相続税の対象となる相続財産を減らすことができるといえます。

なお、贈与税には、父母や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合に一定額が非課税になる制度など、さまざまな特例措置が設けられています。

110 万円を超えるまとまった金額を贈与したい場合でも、こうした制度を利用すれば、非課税で贈与することが可能です。

 

贈与は、うまく活用すれば贈与税と相続税の両方の節約にも使えます。

相続対策のためにも、税金のシミュレーションをしておきましょう。