適用期間延長かつ適用対象も拡充 空き家の譲渡所得の特別控除

近年、空き家は増加傾向にあり、安全や治安面からも問題となっています。そこで、空き家の発生を抑制するため、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例が令和5年度税制改正で拡充・延長されました。今回は、この特例の概要や改正内容について紹介します。

空き家の譲渡所得の特別控除とは 従来は売主が譲渡前に工事を行う

 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、もともとは2016年4月1日から2023年12月31日までの期間限定で設けられた特別措置です。

 その内容は、被相続人が居住用に使用していた一定の要件を満たした家屋と、その敷地である一定の要件を満たした土地を相続または遺贈により取得した人が、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その家屋(耐震性のない場合は耐震改修をしたものに限り、その敷地を含む)を譲渡すること、または、家屋を取り壊して敷地を更地として譲渡した場合などには、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できるというものです。これまで、この特例の適用を受けるためには、売主が、家屋や土地を譲渡する前に、家屋の耐震改修や家屋の取壊しの工事などを実施する必要があり、このことが、従来の制度の利用上、支障となっていたこともありました。

買主が譲渡後に工事を行う場合も改正後は特例の適用対象になる

そこで、近年大きな社会問題にもなっている空き家の発生の抑制を図るため、改正によって、次のとおり、適用期間が延長されるとともに、適用対象が拡充されました。

 ①特例の適用期間が4年間延長され、期限は2027年12月31日の譲渡までとなりました。

 ②2024年1月1日以降の譲渡に限っては、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、一定の耐震基準を満たすことまたは、その建物の全部の取壊し等を行なった場合にも、その工事などの実施が譲渡後であっても、特例の適用対象とされることになりました。

 この特例の適用を受けることができれば、所得税や住民税の節税につながります。相続財産に空き家がある場合には、この被相続人の居住用財産(空き家)の譲渡所得の特別控除の特例の内容を確認して、空き家の有効活用を検討しましょう。