相続税の還付が発生するケースと 還付にかかる手続きを解説

相続税を納めたあと、本来の⽀払うべき額よりも多く納めていることに気づくことがあります。このような場合は、『相続税の更正の請求』によって、納め過ぎた相続税を還付してもらうことができます。今回は、相続税の更正の請求について解説します。

相続税の更正の請求とは︖納め過ぎた相続税は還付される

 相続税の申告書を提出した後に、計算や評価の誤りなどで、課税価格や税額が過⼤であったことに気づき、税⾦の還付を受けたい場合は、正しい相続税額に減額更正することができます。その減額更正を求める⼿続を『相続税の更正の請求』といいます。相続税の更正の請求には期限があり、原則として相続税の申告期限(被相続⼈が亡くなったことを知った⽇の翌⽇から10か⽉以内)から5年以内(後発的理由などにより更正の請求を⾏う場合には、それらの事実が⽣じた⽇の翌⽇から4か⽉以内)に⼿続きを⾏う必要があります。

 相続税の更正の請求を⾏うことで、相続税の還付が考えられる主なケースには、
①未分割で申告した後に財産を分割した場合、
②未分割の財産が分割されたことにより軽減措置や特例を適⽤する場合、
③認知、廃除の取消しなどによる相続⼈の異動があった場合、
④遺留分侵害額請求に基づき遺留分侵害額を返還した場合、
⑤遺贈に係る遺⾔書が発⾒されたり、遺贈の放棄があった場合などがあります。

①と②では、相続税の申告期限内に遺産分割協議がまとまらない場合に、未分割の状態で法定相続分で相続したことにして仮に申告をすることがあります。その後に財産の分割がまとまったときに改めて申告をします。そして、申告期限から3年以内に未分割の財産が分割された場合には、『配偶者の税額軽減措置』や『⼩規模宅地等の特例』などが利⽤できるようになります。また、③では法定相続⼈の⼈数が増えることになり、④と⑤では相続財産が減少することになるため、そのことによって申告した相続税額より本来納めるべき税額が少なくなることがあります。

相続税の更正の請求の流れ 認められなければ不服申⽴できる

 相続税の更正の請求の流れは次のとおりです。まず、相続税の更正の請求書を、更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類(遺産分割協議書や遺⾔書など)を添付し、納税地を所轄する税務署へ提出します。その後、税務署で審査が⾏われ、更正の請求が認められた場合は『相続税の更正通知書』が送付され、続いて『国税還付⾦振込通知書』が送付されてきます。その後に還付⾦が指定の⾦融機関の⼝座に振り込まれます。税務署で更正の請求が認められなかった場合は、『更正の請求に対してその請求をすべき理由がない旨の通知書』が送付されます。この結果に納得できないときは、その通知を受けた⽇の翌⽇から3か⽉以内に、処分を⾏った税務署⻑に対して再調査の請求をするか、国税不服審判所⻑に対する審査請求をするかのいずれかを⾏うことができます。

 相続税の払い過ぎが起きる理由は、まず、相続税の仕組みが複雑になっていることが挙げられます。特に不動産などの相続財産の評価はむずかしく、同じ⼟地であっても⼈によって評価額が異なる数字となることは珍しくありません。また、相続税にはさまざまな特例があり、特例の要件を充⾜していてもそのことを看過して申告してしまうことがあります。さらに、相続税関連の税制改正は毎年のように改正され、相続税の計算に影響が及ぶことがあるため、誤って申告する可能性があります。そのため常に最新の法律を把握しておく必要があります。相続税の計算は複雑です。少しでも不安なことや、疑問点がある場合は、相続税の⼿続きに精通している実務経験の豊富な税理⼠に相談することをおすすめします。