総務省統計局の家計を主に⽀える者の年齢階級別の持ち家率の調査では、60歳以上の持ち家世帯⽐率が約80%という状況であり、持ち家の今後について頭を悩ませる⼈も増えています。今回は住まいの終活について考えてみましょう。
⼈⽣の終わりを⾒据えて⾏う終活において、⾃分の⽼後の住まいについて考えることも必要です。しかし、それだけではなく財産の⼀つという意味からも、持ち家(以下、「⾃宅」)をどうするかを早めに決めておくことが重要です。なぜなら『住まいの終活』は、遺産相続にも影響するからです。そこで、住まいの終活の具体例を説明します。
住まいの終活には、⽼後資⾦の調達、相続税対策などの状況に応じて、「⾃宅に住み続けて、亡くなったら家族が相続する」「家族に⽣前贈与する」「⾃宅を売却して現⾦化する」「リースバックする」などの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
まず、⾃宅に住み続けて、亡くなったら家族が相続する⽅法は、愛着のある⾃宅で暮らしたい、亡くなった後に⾃宅に住む家族がいる、⽼後の資⾦の蓄えがある、相続税対策を考えているなどの場合に適しています。この⽅法では、住み慣れた環境で⽼後を過ごすことができ、亡くなった後は家族が⾃宅を相続することで⼩規模宅地等の特例を受けることができれば相続税を節税することもできます。ただし、亡くなった後に、相続⼈の間で⾃宅の相続をめぐるトラブルが起きやすいというリスクがあります。
相続トラブルを避けたいのであれば、⾃宅を⽣前贈与する⽅法があり、⾃宅を引き継がせたい家族がいる、⽼後資⾦に⼼配がないなどの場合に適しています。ただし、⽣前贈与によって、継承させたい⼈に⾃宅を譲ることはできますが、通常は⾃分の新たな住まいを確保する必要があり、家賃などの⽀払いも発⽣する可能性があることに注意が必要です。また、受贈者に相続税よりも多額の贈与税が課されることもあります。
⼀⽅、⽼後資⾦の調達が必要ならば、⾃宅を売却する⽅法があります。⾃分の死後、⾃宅に住む家族がいない、⾃宅を残すと相続で揉める可能性がある場合に適しています。この⽅法では、売却資⾦を⽼後資⾦に充てることができます。ただしその場合、賃貸住宅などに住み替えて、新しい⽣活環境で暮らす必要があり、年齢や収⼊などの⼊居条件などで⾃宅売却後の住まいの確保がむずかしい場合もあります。
そこで、⽼後資⾦の調達が必要な場合に便利なのが、『リースバック』です。リースバックとは、⾃宅は売却するものの、同時に買主と賃貸借契約を締結して賃借⼈となる⽅法で、⽼後資⾦を調達しながらも住み慣れた家で暮らすことができます。その反⾯、売却⾦額が相場以下になることが多く、売却以降は家賃を⽀払わなければなりませんし、契約によっては期限が定められている場合もあり、将来は家賃改定のリスクも想定されます。
終活においては、安⼼した⽼後の暮らしや円滑な相続のために、⾃宅をどうするかの道筋をつけておくことが⼤切です。まずは⾃分が亡くなった後の⾃宅の扱いについて考えてみましょう。