近年では、『ふるさと納税』の利⽤者が年々増加しています。物価の上昇が続くなか、この制度をうまく活⽤することによって、家計の⽀出を節約することができます。今回は、ふるさと納税の仕組みやメリット、注意すべき点などについて解説します。
総務省が公表した『ふるさと納税に関する現況調査結果』(2023年度実施)によれば、2022年度の実績は、『ふるさと納税』の受⼊額が約9,654億円(前年度⽐約1.2倍)、受⼊件数が約5,184万件(同約1.2倍)でした。また、ふるさと納税による控除適⽤者数は約891万⼈(同約1.2倍)と過去最多で、利⽤者数は年々増加している状況にあります。
ふるさと納税とは、本来であれば住んでいる⾃治体に納めるはずの税⾦を、寄付というかたちで任意の⾃治体に納め、応援するものです。その返礼として、寄付した各⾃治体からさまざまな品物やサービスなどを受けることができる仕組みです。また、⼀定の範囲内の寄付額であれば、寄附額のうち2,000円を超える部分について、寄附を⾏なった年の所得税と翌年度の住⺠税から、原則として全額が控除されます。
これらの税⾦の控除は、具体的には次のように計算されます。所得税の控除額は、「(ふるさと納税額−2,000円)×所得税の税率」です。住⺠税の控除額には、基本分と特例分があり、基本分が「(ふるさと納税額−2,000円)×10%」、特例分が「(ふるさと納税額−2,000円)×(100%−基本分10%−所得税の税率)」です。ただし、控除対象となるふるさと納税額には上限があり、所得税では総所得⾦額等の40%、住⺠税(基本分)では30%特例分は住⺠税所得割額の20%が限度になります。
このように、ふるさと納税の活⽤により実質負担が2,000円で、⾃治体から返礼品として特産品などを受け取ることができ、結果として、家計の⽀出の節約が可能になるため、⼤きなメリットがあるといいえます。
ただし、次のようにふるさと納税をしないほうがよいケースもあります。まず、ふるさと納税による控除は、本来納める税⾦があってこそ受けられる制度なので、所得税や住⺠税を納めていない場合は、前述のようなメリットはありません。また、税⾦を納めていても収⼊が少ない場合には、メリットを得られません。全額控除できる寄付⾦が少額になるため、返礼品は寄附額の3割以下というルールを考えると、返礼品の価値と⾃⼰負担の2,000円が相殺される場合があります。ふるさと納税は寄附として⽀出を伴うため、資⾦に余裕がない場合は避けたほうがよいでしょう。また、初めて住宅ローン控除を受ける場合は、住宅ローン控除とふるさと納税による控除はどちらも納税額から控除するため、控除額が上限を超えるおそれがあります。そのほか、転職や産休などで収⼊状況が変わる場合は、控除の上限額を確認して利⽤する⾦額を決めるのがよいでしょう。
ふるさと納税は控除や返礼品の⾦額に上限があり、必ずしも⾦銭⾯でメリットを得られるわけではありません。控除を受けるためには、原則として、ふるさと納税を⾏なった翌年に確定申告を⾏う必要があります。なお、確定申告の不要な給与所得者などがふるさと納税を⾏う場合、⼀定の要件を満たせば確定申告を⾏わなくても寄附⾦控除が受けられる特例的な仕組みである『ふるさと納税ワンストップ特例制度』を利⽤できます。
このように、『ふるさと納税』は、限度額の確認や⼿続きなど⼿間はかかるものの、ある程度収⼊がある⼈には⼤きなメリットがあります。この機会に試してみてはいかがでしょうか。