『税務調査』という言葉を聞いたことがあっても、実際にどのようなことが行われるのかを理解している方は少ないのではないでしょうか。今回は、税務調査の流れや概要、また税務調査で気をつけるべきポイントなどについて解説します。
税務調査とは、申告した内容が正しいかどうかを税務署が確認する目的で行われる調査で、事業の規模にかかわらず、すべての法人および個人事業主が調査の対象となりえます。税務調査では、経費の内容、売上の計上漏れなどについて詳細に確認され、申告に誤りなどがあれば指摘を受けることになります。
税務調査の主な流れは、次の通りです。まず、原則として調査の前に税務署から事前通知があり、調査実施日などを決定します。次に、調査当日に税務調査官が訪問し、通常は1日から数日間にわたって実地調査が実施されます。調査の範囲は、基本的には過去3年分の申告内容の確認ですが、問題が判明した場合は5年、重大な問題がある場合には最長7年までさかのぼることもあります。このため、申告の書類などは原則、7年間保管することになっています。調査の結果、指摘がなければ調査は終了ですが、指摘事項があった場合には、指摘を認めて「修正申告」を行う、もしくは指摘に納得ができないときは、不服申し立てなどを行うことができます。
税務調査が実施される時期について決まりはありませんが、秋に調査が行われることが多くなっています。これは、3月に決算を行う会社が多いため、調査が9月~12月に集中するからとも考えられます。また、税務調査が実施される頻度についても、同一事業者に対して通常は3年から5年に1度くらい調査が行われることが多いといわれています。ただし、事業規模により調査頻度も変わりますので、あらかじめいつ実施されるかを想定しておくことはむずかしいでしょう。
税務調査に対して事前にできる対策としては、次のようなものがあります。まず、調査対象となる資料やデータに不備がないかを確認しましょう。調査対象となるのは、主に申告書類など、帳簿書類、領収書・請求書・契約書・通帳などの原始資料が中心です。また、原始資料だけでなく、パソコン内のデータについても調査されることがあります。次に、指摘されやすい項目について、事前にチェックしておきましょう。たとえば、売上では計上漏れや期間のずれはないか、原価が売上と対応しているか、経費では私的な経費が含まれていないかなどが、指摘されやすい項目です。そして、調査で指摘されそうな内容がある場合は、関連する資料を準備しておくことで、落ち着いて対応することができます。
また、書面添付制度の活用も有効な対策です。この制度は、税理士が申告書の作成に関して計算、整理、相談に応じた事項を記載した書面を添付することで、税務調査を受けることになった場合、税理士に意見陳述の機会が与えられるというものです。この制度を利用すると、税務調査を実施する前に、税務署は添付書面に記載されている内容について、顧問税理士に意見を述べる機会を与えなければならないことになっています。その結果、申告した内容に問題はなく、調査の必要性がないと認められた場合には、実地調査が省略されます。
経理や税務の事務で不正な処理などを行うこともなく、日頃から資料をきちんと整備しておけば、税務調査が入ったとしても過度に心配することはありません。それでも不安に感じる場合は、その分野に詳しい専門家に相談するとよいでしょう。