『信託』とは、自分の大切な財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って運用・管理してもらう制度です。信託は大きく分けて、非営利目的で行う『民事信託』と、営利目的で行う『商事信託』があります。今回は商事信託の基礎知識について紹介します。
商事信託(以下、信託)は、財産を信託銀行ななどに託す「委託者」、信託を受けた財産を管理・運用する「受託者」、信託された財産から生じた利益を受け取る「受益者」の三者で構成されます。受益者は委託者自身のほか、委託者以外の第三者を設定することもできます。
信託には、➊目的を自由に決められる、➋どんな財産でも信託できる、➌信託した財産は受託者が安全に管理する、などの特徴があります。
信託の利用により、信託された財産は、受託者の名義となり分別管理されるため、委託者や受託者の破産や倒産による影響を受けることはありません。また、財産は受託者に移転していますので、信託契約後に委託者が認知症を発症しても、その影響を受けません。
そして、信託された財産は信託受益権という権利となるため、信託の目的に応じて財産を流動化することが可能となります。
信託は、目的などに応じて、さまざまな方法で活用されています。
たとえば、子どもや孫のために教育費や結婚・出産・子育ての費用を支援したい場合は、「教育資金贈与信託」や「結婚・子育て支援信託」が利用されています。また、特定障害者の方の生活の
安定と療養を生涯にわたり支えたい場合は、「特定贈与信託」などが利用されます。
一方、信託の利用に際して気をつけるべきポイントがあります。信託は実績配当が原則であり、信託財産によって生じる利益も損失も受益者に帰属します。ただし、信託銀行などで取り扱ってい
る信託商品の一部には、元本補てん契約が付されているものもあり、その信託であれば、預金保険制度により一定額まで保護されます。
このように信託の活用にはメリットもありますが、当然リスクもあります。利用する前には十分に検討をしましょう。