相続税の税務調査では、実地調査のほかにも簡易な接触が行われています。こうした調査により申告漏れなどが判明した場合には、追徴課税が課されることがあります。今回は、相続税の税務調査の状況や追徴課税をなるべく受けないようにする対策などを紹介します。
国税庁では、申告納税となっている相続税について、適正で公平な課税を確保するために、資料や情報などから申告額が過少であると考えられる事案や、申告の義務があるにもかかわらず無申告
であると考えられる事案などについて、税務職員が自宅などを訪問して相続税の実地調査を行なっています。
2023年12月に発表された「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査の件数は8,196件(対前事務年度比129.7%)、追徴税額の合計は669億円(同119.5%)と、共に増加しました。そのうち申告漏れなどがあった件数は7,036件(同127.2%)で、調査全体の85.8%という高い割合で非違が発生しています。そして、無申告事案に対する実地調査件数は705件(同122.4%)、追徴税額の合計は111億円(同148.7%)で、実地調査1件当たりの追徴税額が1,570万円(同121.5%)となっており、いずれも前年に比べて大幅に増加しました。
こうした税務職員の訪問による実地調査のほかに、文書、電話による連絡または来署依頼による面接などの方法で、申告漏れや計算誤りなどがある申告を是正する「簡易な接触」も実施されています。先の発表資料によると、「簡易な接触件数」は15,004件(対前事務年度比101.9%)、「申告漏れ等の非違件数」は3,685件(同101.3%)、「申告漏れ課税価格」は686億円(同108.9%)、「追徴税額」合計は87億円(同125.2%)でした。いずれの結果においても、簡易な接触の事績の公表が始められた「平成28事務年度」以降で、最も高い数値となっています。
期限内に申告・納税をしたものの申告額が過少であった場合は過少申告加算税が、正当な理由なく期限内に申告・納税をしなかった場合は無申告加算税が、本来納めるべきであった相続税との差額に加えて課されることになります。
また、納税額などの計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠ぺい、または仮装して虚偽の申告をした場合や、意図的に申告を行わなかった場合には重加算税が課されることになります。
先に紹介したように、相続税の実地調査などは、資料や情報などから申告額が過少であることや無申告であることが想定される場合に実施されます。相続税の実地調査、簡易な接触が行われた場合、申告漏れなどが見つかることも多く、追徴課税が発生する可能性があります。追徴課税とは、申告した内容に誤りや漏れがあった場合、または申告の必要があるにもかかわらず申告しなかった場合などに発生する可能性があるものです。
そこで、こうした実地調査、簡易な接触による 追徴課税を受けないようにするためには、相続財産を漏れなく把握したうえで、正しい内容で期限内に申告することが大切です。
相続財産では、名義預金(口座の名義は配偶者や子ども、孫の場合でも実質的には故人が預金の出捐、管理運用をしていた預貯金)、タンス預金、生命保険金、美術品・骨董品などが申告漏れとなることが多いため、見落とさないように注意しましょう。また、申告した後に申告漏れに気づいたときには、できるだけ速やかに修正申告をしましょう。