親や祖⽗⺟が教育⽬的の資⾦を⼀括で⼦や孫に贈与した場合、⼀定額まで⾮課税となる制度があり、税制改正により適⽤期間は延⻑されましたが、2026年3⽉末がその期限となっています。今回は、教育資⾦の⼀括贈与の⾮課税制度について紹介します。
教育資⾦の⼀括贈与の⾮課税制度とは、親や祖⽗⺟など直系尊属から教育資⾦に充てるために⼦や孫などに⼀括贈与された⾦銭などについて、⼀定の要件を満たす場合に受贈者1⼈につき1,500万円(学校以外に⽀払う⾦銭は上限500万円)まで贈与税が⾮課税になる制度です。受贈者は30歳未満の⼦や孫などで、⾦銭などを取得した⽇が属する前年分の所得税に係る合計所得⾦額が1,000万円以下であることが要件です。なお、本制度の適⽤は2026年3⽉31⽇までとなっています。
本制度の利⽤には、⾦融機関などでの⼿続きが必要です。まず、親や祖⽗⺟は⼦や孫と贈与契約を結び、その後、⾦融機関などと教育資⾦管理契約を締結して教育資⾦専⽤の⼝座を開設します。そして、教育資⾦⾮課税申告書を⼝座開設した⾦融機関などを経由して税務署に提出し、贈与契約に基づく贈与資⾦を原則、⼀括で⼊⾦します。この時点では贈与税は課税されません。また、専⽤⼝座は⾦融機関が管理し、⼦や孫は教育資⾦の⽀払いに充てた領収書や請求書を⾦融機関などに提出することで、専⽤⼝座から⾮課税でその分の資⾦を引き出せます。ただし、⽬的外での引き出しには贈与税がかかります。また、領収書などの提出には期限がありますので、注意しましょう。
対象となる教育資⾦は、⼊学⾦・授業料、⼊園料・保育料、学⽤品の購⼊費をはじめ、学校などに直接⽀払う費⽤のほか、学習塾などの⽉謝、学校指定の教材費など、教育を受けるために学校など以外に対して⽀払う費⽤も含まれます。ただし、学校など以外に対して⽀払う⾦銭は、1,500万円のうち最⼤500万円までが⾮課税とされています。
本制度には、次のようなメリットがあります。
まず、⼤きな⾦額を⼀度に⾮課税で贈与できることで相続税対策になると共に、次世代への⽀援が可能となります。また、孫にかかる教育費⽤を祖⽗⺟が⽀援することで、親世代の経済的負担を軽減することにつながります。そして、資⾦の⽤途が教育⽬的に限定されているため、資⾦が⽬的以外に使われるなどのトラブルも起きにくく、安⼼して贈与することができます。
⼀⽅で、次のようなデメリットもあります。まず、教育資⾦の範囲が限定されているため、広く⾃由に使えるわけではなく、受贈者が23歳以上になると⾮課税の対象から外される費⽤もあります。そして、受贈者が⼀定年齢になると契約が終了し、それまでに教育資⾦を使い切らなかったときには残額が、契約終了⽇が属する年の受贈者の贈与税の課税価格に算⼊される場合や、契約期間中に贈与者が死亡したときは、⼀定の要件を満たしていないと残額が相続税の対象になる場合があります。また、専⽤⼝座の開設や領収書の提出など⼀定の⼿続きが必要で、⼿間がかかります。
本制度の利⽤に適しているケースとしては、教育費⽤が⾼額になることを⾒越して早めに資⾦計画を⽴てたい家庭や、相続税対策を考えている祖⽗⺟や親、財産を⼦や孫に贈与してあげたいが、使途を教育⽬的に限りたい場合などがあります。
教育資⾦の⼀括贈与の⾮課税制度は、2026年3⽉31⽇までの期間限定ですが、節税対策と次世代⽀援の両⾯で有効な制度です。メリットとデメリットを理解したうえで、⾃分や家族にとって適切かを検討して制度を利⽤することが⼤切です。