成年後見制度による遺産分割 知っておくべき手続きと注意点

成年後⾒制度を利⽤している⽅が相続に関わる場合、遺産分割には成年後⾒⼈の関与が必要となることがあります。今回は、成年後⾒⼈が関与する遺産分割の⼿続きと、その際に注意すべき具体的なポイントについて説明します。

遺産分割と成年後⾒制度成年後⾒⼈の具体的役割は︖

 遺産分割とは、相続⼈が複数⼈いる場合に相続財産を分ける⼿続きのことです。通常は相続⼈全員で話し合い(遺産分割協議)を⾏い、分割⽅法を決定します。しかし、相続⼈のなかに成年後⾒制度を利⽤している⼈がいる場合、⼀般的な遺産分割とは異なる点があります。

 成年後⾒制度とは、認知症などで判断能⼒が低下した⽅の財産管理(預貯⾦や不動産の管理など)や⾝上監護(⼊院や介護の⼿続きなど)を⽀援する制度です。この制度の⽬的は、判断能⼒が不⼗分な⾼齢者や障害者を法的・経済的に保護することです。成年後⾒⼈には、本⼈の財産に関する法律⾏為についての代理権があるため、遺産分割協議に本⼈の代理⼈として参加し、遺産分割協議への同意を⾏います。

 相続⼈の代理⼈として成年後⾒⼈がいる場合の遺産分割の基本的な流れは、次の通りです。相続⼈の確定と相続財産の調査が終わると、相続⼈全員で遺産分割協議を⾏いますが、協議を進めるためには成年後⾒⼈が本⼈を代理して参加する必要があります。次に、協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し相続⼈全員が署名・押印します。この際も成年後⾒⼈が本⼈を代理して⾏う必要があります。そして、合意した協議書の内容に従って遺産分割が実⾏されます。

 なお、成年後⾒⼈には、本⼈の意思を尊重しつつ、本⼈の利益を最優先に考慮して遺産分割協議を⾏うことが求められます。特に、原則として本⼈の法定相続分を確保する必要があり、本⼈の⽣活状況や将来の資産管理を考慮し、最適な財産配分を⽬指すことが重要です。

成年後⾒⼈が関与する場合の遺産分割での注意点

 成年後⾒制度を利⽤している場合、遺産分割の進め⽅には通常と異なる部分があり、慎重な対応が求められます。

 ①利益相反に注意:成年後⾒⼈が相続⼈の⼀⼈である場合など、成年後⾒⼈と本⼈の利害が対⽴(利益相反)することがあります。このような場合は、本⼈の利益が守られなくなる可能性があるため、家庭裁判所へ特別代理⼈の選任を申し⽴てる必要があり、これにより公平性が確保されます。②成年後⾒⼈との円滑なコミュニケーション:遺産分割協議が⻑期化・複雑化する可能性があるため、成年後⾒⼈と密接に協⼒することで、スムーズな進⾏が可能です。成年後⾒⼈に遺産分割案を丁寧に説明する、成年後⾒⼈を通して本⼈の意⾒を尊重し協議を進める、また、必要に応じて弁護⼠など専⾨家に相談するといった対応が⼤切です。③調停や審判に備える:協議がまとまらない場合、家庭裁判所での調停や審判に発展する場合もあります。調停では、成年後⾒⼈は本⼈を代理して参加し、合意を⽬指します。⼀⽅、審判では、家庭裁判所が遺産分割の⽅法を決定するため、成年後⾒⼈はその⼿続きに関与することになります。④居住⽤不動産の処分には許可が必要:成年後⾒⼈が、本⼈の居住⽤の建物やその敷地を売却・処分する場合には、家庭裁判所の事前許可を取得する必要があります。その際には、本⼈の⽣活への影響や将来の資産管理が慎重に検討されます。遺産分割協議においてもその点に留意が必要です。

 成年後⾒制度を利⽤している場合の遺産分割は、⼀般的な遺産分割よりも慎重な対応が求められます。事前に情報収集を⾏い、準備を進めましょう。