2.葬儀の準備をする - 相続が発生してから相続税を申告するために行う8つのこと

相続が発生してから相続税を申告するために行う8つのこと~2.葬儀の準備をする

死亡届を出す手続きをとともに、行わなければいけないのが葬儀の準備です。
葬儀の準備は、一般的には葬儀社を見つけることからスタートするものと思われる方も多いかもしれません。

しかし、相続という点では、2つのことを葬儀の準備においてきちんと行っておくことが重要です。
その2つとは、「葬儀費用の準備」「領収書の保存」です。
この2つは、葬儀の前にきちんと行っておかないと、後で必ず揉める原因になります。

葬儀費用は事前に準備しておこう

まず葬儀費用の準備ですが、どんなに小さな葬儀を行うにしても、百万円単位のお金がかかってきます。
たとえば、2014年に日本消費者協会が調べた「葬儀についてのアンケート調査」では、葬儀費用は全国平均で200万7,000円となっており、葬儀を出すのにも数百万円単位のお金がかかることがわかりました。
内訳としては、葬式の本葬などの費用が122.2万円、戒名料などを含めた寺院費用が44.6万円、飲食代が33.9万円となりました。

これだけの金額がかかるので、残された親族に手持ちの現金がない場合は、亡くなった人の銀行口座から引き出そうと考えるかもしれません。
ところが、亡くなった人の銀行口座は亡くなった時点で銀行によって口座凍結されてしまうため、自由に引き出すことができなくなります。
なぜこのような処置になるのかというと、亡くなった人の財産は、亡くなった時点で、つまり、相続がスタートした時点で、相続人全員の共有財産になるからです。
銀行口座からお金を下ろすためには、相続人すべての同意が必要で、分割協議を経て作成された遺産分割協議書の提出を求められるのです。

このため、葬儀費用は事前に準備しておく必要があります。
または、喪主を務める予定である、配偶者や子どもに予め渡しておくなどの対策が必要でしょう。
最近では、死亡保険金を即日で入金してくれるサービスを行う生命保険会社も出てきました。
そういう生命保険会社を選ぶことも必要です。

お金が必要なのは、葬儀にかかるお金だけではありません。
お寺へのお布施や親族や友人などを集めて法要を行った場合は、その会食のお金などがあります。
そういった費用も葬儀に関わる費用として準備をしておく必要があります。

葬儀費用の一部は控除が認められる

葬儀費用はだいたい現金で支払うことが一般的です。
このため、葬儀費用が予め用意されていない場合は、一時的に亡くなった人の遺産を相続する親族の誰かが負担しなければなりません。

しかし、問題はその後です。
遺産分割の際に、親族が負担した葬儀費用も考慮に入れられなければ不公平になってしまいます。
そこで、葬儀費用を相続財産から差し引くことができる制度が認められています。
もちろん、相続財産から差し引くことが認められた支出に対しては相続税も課税されません。

葬儀費用として相続財産から差し引くことが出来る費用

  1. 死体の捜索や死体や遺骨の運搬にかかった費用
  2. 遺体や遺骨の改葬にかかった費用
  3. 葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
    (仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます)
  4. 葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用
    (お通夜、告別式などにかかった費用、消耗品、雑費、お手伝いの方への心付けなどの出費)
  5. 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
    (お布施など)

これらの費用がかかった場合は、きちんと葬儀費用として支払ったことを証拠として残すために領収書をきちんと保存しておきましょう。
そして、後日、遺産分割協議のときに、その領収書を提出します。
そうすれば、葬儀費用を相続財産から控除することができます。
もし領収書がなければ、葬儀費用を負担したことを証明できません。
遺産分割において、負担した親族は葬儀費用を含めた遺産を分割することになり、不公平になってしまいます。

葬儀費用として相続財産から差し引くことが認められない費用

  1. 香典返しのためにかかった費用
  2. 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  3. 初七日や法事などのためにかかった費用

これらの費用は相続財産から差し引くことができないので、後々、葬儀費用で揉めないためにも、きちんと誰が負担をするのか決めておくことが大事です。
たとえば、葬儀費用を含めて長男や長女に多めに相続財産を渡しておくことで、争いを回避する方法もあります。

相続財産から差し引くことが認められる費用なのか、そうでないのかわからない場合は、とりあえず宛先は喪主で領収書をもらっておくことが大事です。
また、お布施は領収書をもらうようにしましょう。
もらえない場合は日付と金額をメモで残しておくことを忘れずに。

国民健康保険や後期高齢者医療制度から葬祭費が支給される

また、亡くなった方が後期高齢者医療制度または国民健康保険に加入されていた場合、葬儀を行った方(喪主)に葬祭費(7万円)が支給されます。
いずれの場合も領収書は必要となります。
申請期間は葬儀の翌日から2年間ですが、忘れずに支給の手続きを取りましょう。