以前、相続の事前準備のポイントである「財産がどれだけあるのかを把握する」ことをご紹介いたしました。
土地の評価まで終わったところで、皆さんは、あることに気づいたかもしれません。
というのは、2015年1月以降、相続税の控除額が減ることになりました。
土地の評価額を計算しているうちに、大都市圏で一戸建てを所有している方のなかには相続税を支払わなければならない状態になっている人も少なくないはずです。
しかし、安心してください。
多くの人が土地の関する特例を活用することができるはずです。
それは「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」という制度です。
被相続人と同居していた配偶者や子どもがその土地を相続した場合、土地の330㎡までは、土地の評価額を8割減にするというものです。
ただし、配偶者が土地を相続する場合はこの特例は無条件で認められますが、子どもが土地を相続する場合は、申告期限まで継続して居住している実態が必要です。
なぜならば、この特例の意図は、相続税が課税されることによって、今まで住み続けた土地を立ち退かなければならないということを防ぐのが目的だからです。
そのため、特例は主に居住地として利用していた宅地に適用が限られます。
この特例を使う場合は、相続税の申告が条件になっています。
これはつまり、相続税が課税される課税価格が基礎控除の範囲内であっても、相続税の申告期限である相続が開始されてから10カ月以内に税務署に申告するということです。
もちろん、遺産分割が終わっていなければ、適用は認められませんので、特例を活用するためには、家族間の揉めごとは予め調整しておかなければなりません。
なお、自宅店舗や自宅内工場など事業を営んでいる土地については、400㎡まで8割の評価減が認められます。
土地の評価の方法はこれまでの方法である程度、理解できたと思います。
では次に建物(家屋)の評価について説明をしていきます。
建物の評価は固定資産税の評価額に1.0を掛けた数値で計算します。
倍率の1.0は全国共通であり、1.0をかけるということは、固定資産税評価額と同額という意味になります。
では、固定資産税評価額はどのように調べればよいのでしょうか?
固定資産税評価額は、毎年4月頃、市役所など役場から通知書が送られてくるので、それを確認します。
手元に見つからない場合は役場から固定資産税評価証明書を取り寄せれば、確認できます。
固定資産の価格は総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、再建築価額を基準とした方法で行うこととされています。
つまり、評価しようとする家屋と同じ状態の家屋を新築した場合に必要とされる建築費(再建築価額)を元に新築時からの経過年数に応じた減価率(経年減点補正率)を乗じて価格を求める方法になります。
その時期の建築費が計算に入って来るので、インフレ時には評価額が上がったり、デフレ時には下がったりすることもあります。
一方で、玄関に100万円ほどの御影石を使ったり、バスルームに500万円の浴槽を取り付けたりしたからといって、基本的に評価額が上がるということはありません(税務署が相続対策とみなせば別です)。
家屋内のものは通常の固定資産税の評価のなかに含まれるからです。
ただし、家屋の外は別評価です。たとえば門や塀などにも経年劣化に応じた評価がかけられます。
庭石ひとつとってみても、明らかに価値がありそうな庭石があれば、税務署もチェックを入れてきます。
そのような場合は、調達価額に70%をかけ評価されることがあるので注意が必要です。
自宅や自宅店舗などの場合は、固定資産税評価額がそのまま評価額になりますが、アパートのような貸家は、固定資産税評価額から、借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を差し引いてもらえます。
借りている人には「借家権」が発生しているので、いつでも自由に立ち退いてもらうわけにはいきません。
その分、評価を下げてもらえるのです。
もちろん、土地についても「賃家建付地」として評価減になります。
具体的な計算式は次の通りです。
アパート、賃家等の建物(家屋)の評価額
=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
「借家権割合」は、全国一律30%と決められています。
賃貸割合は、その貸家について相続開始時点で実際に貸し付けられている割合です。
アパートに部屋が10室あったとして、相続開始時点で賃貸していたのが8室である場合、賃貸割合は80%になるというわけです。
相続開始時点で入居者がいて、その後、空いてしまった貸家でも、以前より継続的に賃貸されていたもので、一時的に賃貸されなくなった部屋は、賃貸していたものと判断しても問題ありません。
一方、自宅兼アパートのような賃貸併用住宅の場合には、自宅部分、賃貸部分に分けて、それぞれを評価します。
たとえば、3階建ての建物で、3階部分がオーナーの居住用、1~2階が賃貸部分だとしましょう。建物の固定資産税評価額が3,000万円で、借家権割合が30%、賃貸割合100%だとします。
具体的な計算式は次の通りです。
となります。
このように不動産の場合は、貸家を建築することで評価を下げることができるため、賃貸アパートやマンションを建築する方が意外と多いのです。
しかし、一方で注意しなければならないのが、貸家を建築途中に亡くなってしまった場合です。
この場合、建物は費用原価の70%で評価されます。
費用原価とは、オーナーが建築業者に支払った金額ではなく、建築業者が建物の建築のために土木工事にかけた費用や左官業者などに支払った金額になります。
相続について、気になることや悩んでいることがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。
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