債権者と税務署の両方が怖い! 「債務免除」をめぐる「二枚舌」が招いた悲劇 前編

中村勇さんは一代で会社を創業し、東京都内に自身が保有していた複数の不動産を、長男・一郎さん、次男・政春さん、長女・文子さんに生前贈与しました。

3兄妹は父・勇さんからの6億円評価の土地贈与による贈与税4億円を、それぞれ納付しました。

親の土地売却代金で
子の借金を返済

その後、勇さんの会社は破たんしました。後継者だった次男・政春さんは多額の借入をしていました。その返済のために2001年に東京の自宅を担保に銀行から借り入れましたが、2004年に自宅を12億円で売却し、全額を返済しました。

担保に入れて売却した土地の内訳は、政春さん本人名義の土地6億円、残りの6億円部分は、父・勇さんの所有分でした。
ここで問題なのは、父・勇さん名義の6億円分の土地です。

結果的には、親の土地を売却した代金6億円を、子の借金返済の一部に充当したことになります。勇さんにとっては政春さんへの6億円の債権、つまり貸付金が残ったのです。ここで政春さんは、2004年に公正証書で勇さんから債権放棄を受けました。政春さんの側から見ると、債務免除を受けたことになります。その翌月、勇さんは亡くなりました。

この債務免除は税務上では、勇さんから政春さんへ6億円贈与したことになります。政春さんは、贈与税を支払わなければなりません。
しかし、債務免除を受けなかったことを装うため、相続後に未亡人となった母に対して、6億円に対する利子の送金を細々と続けました。

「父から贈与されていない」「今でも借金の返済を続けており、債務免除を受けてない」と、贈与税を払わなくてもいい形式を表面上整えたのです。

後編へ続く

相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

POINT
● 借入金を債務免除すると贈与とみなされ、贈与税がかかる
● 公正証書で債務免除を受けながら、債務があるように装うと、税務署から悪質な仮装隠ぺいとみなされることがある