相続手続きでは遺言書がない場合に、故人の財産を誰がどう引き継ぐかを相続人全員で話し合って決める必要があります。この話し合いを遺産分割協議といい、その合意内容を記した書面が遺産分割協議書です。今回は、この基本的な役割と意義について解説します。
遺産分割協議書とは被相続人(故人)の遺産について、どの財産をどの相続人がどのような割合で承継するのかを、相続人全員の合意に基づいて明文化した書面です。相続人全員が署名し、実印の押印により遺産の分け方が正式に確定します。
協議書を作成する主な目的は、次の通りです。
①トラブルの予防と解決
合意内容を明確にし、協議成立後に「言った、言わない」の争いや内容の蒸し返しを防ぎます。
②名義変更などの証明
不動産の相続登記や、預貯金・株式の名義変更などの手続きを行う際の証明資料として必要です。
③相続税の特例の適用
小規模宅地等の評価減など、相続税の特例を適用するための申告書類として添付が求められます。
相続人全員が署名・実印を押印した協議書には、原則その内容を一方的に覆せなくなる法的効力がありますが、全員の同意があれば変更可能です。
協議書の必須記載事項は、
①被相続人の氏名、死亡日、最後の住所、②相続人全員の氏名、住所および実印の押印、③すべての相続財産の特定とその承継者です。
特に③は、不動産や預貯金などを登記簿や通帳の記載通りに正確に記載し、誰がどの財産をどう取得するかを明確に記載します。
協議書を作成する際は、協議は相続人全員(未成年者がいる場合は特別代理人の専任が必要な場合あり)で行い、全員が協議書に署名し実印を押印する必要があり、全員分の印鑑証明書の添付も求められます。加えて、把握できていない財産の存在が後からわかった場合の取り扱いも定めておくと、再協議を回避することができ、安心です。
遺産分割協議書は、単なる手続上の書類ではなく、「言った、言わない」といった争いを防ぐための重要な「合意の証」です。財産の特定が不十分、相続人間で感情的な対立がある場合には、専門家に相談し、適切な協議書を作成しましょう。