相続財産を調べることが、節税への第一歩

相続財産を調べることが、節税への第一歩

相続の事前準備のポイントは2つありました。
ひとつは「誰にどれだけ、財産を分けられるのかを知る」こと。
もうひとつは、「財産がどれだけあるのかを把握する」ことです。
ここでは、「財産がどれだけあるのかを把握する」ことについて詳しく見ていくことにしましょう。

相続財産とはどんなもの?

相続財産は、土地や現金(預貯金)だけでなく、株や国債、ゴルフ会員権、名画や骨董品など、すべて財産に含まれます。
気をつけなければいけないのは、一般的に高価で換金性のあるものは財産に含まれるということです。

たとえば、被相続人の趣味がゴルフで、ゴルフコースの会員権をもっていたとします。
相続人はゴルフをしないので、ゴルフ会員券を財産とみなしていなくても、税務署は財産とみなします。
また、何気なく居間に飾られていた絵画が、税務調査のときに数千万円の市場価値があるとわかれば、やはり相続税の課税対象になります。

被相続人が死亡したときに入る死亡保険金も相続財産として、みなされます。
生命保険金は民法上の相続財産ではありませんが、相続が原因で発生するので、「みなし相続財産」と称されています。
死亡退職金や弔慰金も同様です。

ただし、死亡保険金は遺産分割の対象にはなりません。
相続によって発生した生命保険金は受取人固有の財産となるため、相続税の課税対象にはなりますが、分割の対象にはならないのです。
死亡保険金はその性格から500万円×法定相続人の数までの非課税枠が設けられています。

プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も調べよう

クレジットカードの残債や借金、商品を購入したもののお金を払っていないお金、滞納した税金などは債務とみなされ、マイナスの財産となります。
このマイナスの財産も、財産を把握するときには、必ず洗い出すようにしましょう。

配偶者や子どもなど相続をする側が注意しなければならないのは、知らない借金の存在です。
被相続人が、借金の保証人になっていたり、損害賠償義務を負わされていたりすることです。
「目に見えない」「誰も知らない」などのマイナスの財産が存在する可能性がないように、財産目録を事前につくってもらうようにしましょう。

マイナスの財産がプラスの財産よりも多くなるような場合は、どうしても相続しなければいけないというものではありません。
相続放棄をすることもできます。

相続財産から控除できるお金とは?

死亡した人の債務として、相続時に確定しているものは相続税の計算上、財産から控除することができます。
たとえば、課税対象になる財産が5,000万円あった場合、3,000万円の借金があれば、3,000万円分が控除の対象となります。
被相続人がアパートやマンションを経営していた場合、賃借人から預かっている保証金なども、いずれ返さないといけないものですから、こちらも債務とみなされ、控除の対象となります。

また、控除のお金としては葬儀費用も控除することが認められています。
具体的には、葬儀代、お布施代、葬儀の会場代、通夜の飲食代などです。
しかし、香典返しの費用、墓地の買い入れ費用、仏壇、仏具の購入代、初七日の法要費用、四十九日法要費用、医学上で必要になった解剖費用などは控除することが認められない可能性もあるので生前に用意しておいたほうがいいでしょう。

相続財産の土地は路線価で評価する

土地とひと言で言っても建物を建築している「宅地」や、水をひいて米をつくっている「田」、竹や杉などの木を育てている「山林」など、9種類の〝地目〟に分かれています(宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地・雑種地)。
通常、自宅の土地は「宅地」、自宅横の駐車場は「雑種地」となります(雑種地は、他の8種類のいずれにも該当しない土地です)。

地目とともに重要なのが、土地がどこにあるか(場所)です。
同じ地目でも、場所によって、評価する方法が異なるからです。
たとえば、地目が宅地の場合、市街地だと「路線価方式」、郊外だと「倍率方式」という方法で土地の価格を計算します。
土地というのは、時価で計算するのが原則です。

しかし、相続があるごとに、すべての土地の時価を計算するのは、税務署も大変です。
そこで道路に値段をつけ(路線価)、この値段に土地面積をかけて評価するのです。
これを「路線価方式」といいます。

路線価は、路線(道路)に面する標準的な土地1平方メートルあたりの価格のことで、路線価が定められている地域に所在する宅地は、路線価方式で評価します。
路線価が定められているかどうかは、税務署の窓口、あるいは国税庁のホームページで、誰でも確認することができます。

実際に路線価図をみると「300D」のように表示されています。
単位は1,000円なので、この道路に面している路線価は1平方メートルあたり30万円ということになります。
土地の大きさが200平方メートルとすると、30万円×200=6,000万円が路線価格ということになります。
なお、宅地の形状によっては、各種補正率を使って補正します。

一方、「倍率方式」は郊外、農村部、別荘地など路線価が定められていない土地で、「固定資産税評価額」に一定の倍率をかけて相続税評価額を算出する方法です。
固定資産税評価額は、市町村で交付される固定資産税評価証明書で確認します。
倍率は税務署に備え付けられている評価倍率表で確認します。

たとえば、ある土地の固定資産税評価額が4,000万円で倍率が1.2倍の場合は、4,800万円が評価額になります。

所有している土地が市街地にある場合は、基本的に「路線価方式」で計算をする、ということを覚えてていただければ十分です。