相続の事前準備の2つ目のポイントである「財産がどれだけあるのか把握する」ことをさらに詳しく見ていくことにしましょう。
これまでは土地や建物の評価でしたが、今回はその他の金融資産について紹介していきます。
預貯金や株式などの金融資産の評価は基本的に時価で評価をしますが、ちょっとした取り決めがあるので、注意しましょう。
まず相続が発生したら、金融機関で相続開始日現在の残高証明書を発行してもらいましょう。
理由は2つあります。
ひとつは相続税の申告書には残高証明書を添付する必要があるからです。
もうひとつは、相続人は、故人が残した財産、債務の一切を承継します。
相続人が複数いる場合、財産は、遺産分割協議が終わるまで、いったん相続人全員の共有の財産として扱われることになります。
共有財産としての預貯金がいくらあるのか残高証明書によって客観的に証明することができます。
また、普通預金、定期預金ともに、被相続人本人でなく配偶者や子ども名義のものでも、実質的に被相続人のものである場合には、相続税の課税対象となります。
相続開始日直前に引き出した場合も、引き出した金額をプラスして申告を行わなければならないので注意が必要です。
それでは、具体的な評価方法です。預貯金は、貯蓄性が高く利子が多い「定期預金」と、流動性が高く利子が少ない「普通預金」に分けて考えます。
評価は次のようにして計算します。
定期預金の経過利子とは、前回の利払い日の翌日から、日割り計算して支払われる利子のことです。
その額は、相続開始時点で解約した場合の解約利率によって計算します。
株式は相続では
の3種類に分けて考えます。
上場株式とは、全国のさまざまな証券取引所に上場されている株式です。
その株式が上場している証券取引所が公表する課税時期(相続開始日)の最終価格(終値)や各月の平均額で評価をします。
最終価格や平均額は、税務署などにも置かれている『日本証券新聞』などでも確認することができます。
評価は次の4つの金額のうち、最も低い金額で評価します。
次に「気配相場のある株式」についてです。
気配相場のある株式とは、日本証券業協会の登録銘柄、店頭管理銘柄、公開途上にある株式を言います。
登録銘柄は、主に上場基準に達しない中小企業が、株式の発行により容易に資金調達ができるように登録を受けたものです。
店頭管理銘柄は、上場廃止となったものや、登録銘柄が登録取り消しとなり、売買だけが継続されているものです。
この2つは、日本証券業協会の公表する課税時期の取引価格によって評価します。
取引価格に高値と安値がある場合は、その平均額となります。
公開途上にある株式は、上場または登録に際して、株式の公募や売出しが行われる場合の公開価格によって評価します。
最後に「取引相場のない株式」ですが、これは主に自社株が相当します。
自社株は上場株や店頭公開株と違って、客観的な評価基準がありませんし、自社株の評価は自社株の評価はとても複雑なので、税理士など専門家に相談するようにしましょう。
まず、公社債の場合から紹介をしましょう。
国債、地方債、社債などは「公社債」と呼ばれています。
公社債は、
の3つの種類ごとに評価が異なります。
投資信託の評価は、利益の分配方式で評価方法が異なります。
中期国債ファンドやMMFなど日々決算型のものは、次のような計算式で評価をすることになります。
日々決算型
一口あたりの基準価額×口数+再投資されていない未収分配金(A)-Aにつき源泉徴収されるべき所得税相当額-信託財産留保額及び解約手数料
株式市場に上場されている投資信託は上場株式に準じて評価した金額で計算します。
その他のものは、次のとおりです。
その他
一口あたりの基準価額×口数-課税時期において解約請求した場合に源泉徴収されるべき所得税の額に相当する額-信託財産留保額および解約手数料
となります。
このように金融資産は種類によって評価方法が若干、異なるのでまず被相続人が持っている金融資産の種類を調べることが必要です。
財産目録をつくってもらえるように交渉をしましょう。
財産目録があれば税理士に相談するときにもとても便利です。