相続税対策として生命保険を活用している人は多くいるでしょう。
このとき、受取人を配偶者だけにしているケースがよく見られます。
しかし、子どもも受取人に含めたほうが、相続税の節税効果が高くなるかもしれません。
『生命保険の受取人を誰にするか』をよく検討し、相続税を節税しましょう。
配偶者のみを受取人にすると非課税枠を無駄遣いしてしまう
生命保険には【500万円×法定相続人の数】という非課税枠があります。
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども1人の場合、相続人が2人なので合計で1,000万円が非課税枠となり、これを超えた分が課税対象となります。
この非課税枠は、生命保険金の受取額の割合に応じて変動します。
たとえば、配偶者が7割、子どもが3割受け取るとすると、非課税枠は配偶者が700万円、子どもが300万円となります。
配偶者のみが生命保険金を受け取れば、配偶者に1,000万円の非課税枠が適用されます。
配偶者のみを受取人としているケースは多くありますが、この場合に注意しておきたい点があります。
それは、配偶者にはすでに1億6,000万円もしくは、配偶者の法定相続分以下が非課税となる『配偶者の税額軽減』が用意されていることです。
配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下等の場合、生命保険金の非課税枠は活用されません。
一方、子どもには未成年者控除以外にこうした特別な非課税制度がありません。
そこで、子どもを受取人にしておくと、生命保険金の非課税枠を最大限活用できることになります。
『配偶者居住権』の創設により生命保険活用の選択肢が増加
とはいえ配偶者の生活を考えると、自宅を残しつつ、老後資金もできるだけ用意してあげたいところです。
そのためにも、生命保険金は配偶者に渡るようにしたいと考えるかもしれません。
仮に配偶者と子どもの2人が相続人で、相続財産として3,000万円相当の自宅不動産と2,000万円の預貯金があったとします。
このケースで、配偶者が自宅不動産を、子どもが預貯金を相続するとして遺産分割した場合、配偶者の生活費の捻出が難しくなってしまいます。
そこで、自宅に安心して住み続けながら老後資金も用意する手段として、生命保険を活用することもできるのです。
しかし、現在は民法改正で新設された『配偶者居住権』により、居住権さえ持っていれば配偶者は自宅に住み続けられるようになっています。
仮に所有権を2,000万円、居住権を2,000万円と設定した場合、預貯金2,000万円と合わせた合計6,000万円の財産のうち、配偶者には2,000万円の居住権と1,500万円の預貯金を、子どもには2,000万円の所有権と500万円の預貯金を分配することができます。
そうすると、自宅も預貯金も配偶者に遺せるため、配偶者の老後資金として考えていた生命保険を別の目的で活用できるようになります。
受取人に子どもを含める、あるいは子どものみにして相続税を抑えることなども可能となるのです。
生命保険の受取人を決めるときには、相続税の非課税枠を考慮に入れましょう。
配偶者に適用される1億6,000万円以下や配偶者の法定相続分以下の非課税枠(配偶者の税額軽減)も最大限に活用して財産を遺したいところです。
生命保険の受取人を配偶者にしたまま、配偶者が先に亡くなってしまうことがあります。
その後、被相続人が亡くなった場合、その生命保険金は誰が相続することになるのでしょうか。
今回は、生命保険の指定受取人が死亡していた場合の受取人と受取額、そして生命保険金の非課税枠との兼ね合いなどについて紹介します。
指定受取人が先に死亡していたら法定相続人が受取人となる
たとえば、両親と長男・次男の4人家族がいたとします。
あるとき母親が亡くなり、数年後に父親も死亡してしまいました。
相続のため父親の財産を調べたところ、生命保険金があることがわかったものの、受取人は母親となっていました。
この場合、誰が生命保険金を受け取るのかというと、『法定相続人』が受取人となります。
ここで重要なのは“誰の法定相続人なのか”ということ。
被相続人の法定相続人ではなく『保険金の受取人の法定相続人』となることに注意が必要です。
今回のケースでは、子ども2人は受取人である母親の法定相続人であると同時に、父親の法定相続人でもありますから、いずれにしても保険金を受け取ることができます。
しかし、仮に保険金の受取人が母親ではなく、すでに離婚した元配偶者や第三者だった場合、子どもが保険金を受け取れないというケースが出てくることになります。
特に、離婚したのに受取人を元配偶者から変更していなかったとなると、トラブルに発展しやすくなってしまいます。
指定受取人が死亡した場合は、早急に受取人の変更手続きをしておくようにしましょう。
生命保険金の分配方法、非課税枠の適用はどうなる?
では、生命保険金はどのように分配するのかというと、法定相続人で『均等に』分配します。
今回のケースで1,500万円の生命保険金があったとすると、長男と次男が750万円ずつ分けます。
このとき、“相続税の計算はどのようになるのか”についても重要な問題です。
母親の法定相続人である子ども2人が生命保険金を相続した場合、子どもたちは父親の法定相続人でもあるため、生命保険金の非課税枠が適用されます。
生命保険金の非課税枠は【500万円×法定相続人の数】であり、この非課税枠を受け取った保険金の額に応じて分配します。
今回のケースでは、非課税枠は全体で1,000万円となり、1,500万円の生命保険金を子ども2人が750万円ずつ分けますから、非課税枠は長男が500万円、次男が500万円となり、それ以上の金額は課税財産となります。
一方、生命保険金の受取人が法定相続人ではない場合は非課税枠の適用はありません。
生命保険は、加入してから保険金の支払いまでの期間が非常に長くなるケースが多いです。
受け取ってほしい人に保険金を渡すためにも、定期的に指定受取人を含めて見直すことが大切です。
これまでの『自筆証書遺言』には、紛失や相続人による破棄、隠匿、改ざんの可能性もあり、作成してもなかなか活かされないという問題がありました。
一方、『公正証書遺言』は確実に有効となる反面、費用が高く、簡単に書き直しができません。
そこで、自筆証書遺言をより確実に有効にする新たな方法として、『法務局における自筆証書遺言保管制度』を紹介します。
自筆証書遺言を法務局で保管し遺言書の紛失や隠匿等を防止
『法務局における自筆証書遺言保管制度』(2020 (財産額などによる)年7月10日開始)には、以下の特徴があります。
●保管手数料が安い
●『家庭裁判所による検認』が不要
●死後、相続人の一人が遺言書情報証明書の交付請求または遺言書の原本閲覧請求をすると、ほかの相続人に遺言書の存在が通知される
この制度と公正証書遺言のどちらがよいのかについては、ケースバイケースです。
ただし、自筆証書遺言は『法律的に有効な遺言書』でないとその効果が認められませんし、公正証書遺言は、作成前に『財産内容の確認』『自分の意思』をまとめておかなければ、その“効力を発揮”できません。
この点を踏まえて検討することが肝要です。