毎年コツコツ節税をする暦年贈与の3つのポイント

毎年コツコツ節税をする暦年贈与の3つのポイント

相続税を節税するポイントは課税対象になる被相続人の相続財産を減らすことです。
相続財産を減らすためのひとつの方法として「贈与」があります。

もちろん、贈与をすれば贈与税がかかるのですが、贈与税にも節税の方法があるのです。
贈与は年間110万円まで課税されません。
これを「贈与税の基礎控除」と言います。

毎年110万円までは税金がかからない

年に110万円までをコツコツと贈与すれば、その分相続財産が減っていき、相続税をおさえられる計算です。
110万円を5年間続ければ550万円、10年続ければ1,100万円、20年続ければ2,200万円です。
実は相続税を減らす最大のポイントは、生前から計画的に、贈与等によって相続財産を移して、減らしていくことなのです。

たとえば、60歳で会社を定年退職して、80歳で亡くなる人がいたとしましょう。
60歳の時点から、相続税対策として年110万円の贈与を行うと、約20年間続けることができます。
ちなみに110万円の基礎控除額は、贈与を受ける人1人あたりの金額です。

ですから、子どもが3人いて20年間贈与を続けたと仮定すると、2,200万円×3人=6,600万円。
これだけの財産を無税で相続させることができるのです。

さらにこの控除は、子どもだけではなく、孫に贈与するときにも認められています。
子ども3人にそれぞれ孫が1人ずついると仮定し、計6人に20年間贈与を行うと、2,200万円×6人=1億3,200万円。
これだけの金額を相続人に残すことができるのです。

このようにして毎年贈与を行うことを「暦年贈与(一般贈与)」と呼びます。

名義預金とみなされないように通帳や印鑑は別々に管理する

暦年贈与を実行するときには、いつくか注意点があります。

1.贈与した事実の証拠を残すこと

相続人と被相続人の間にまったく金額の移動がないのに「父の通帳にあるこの1,000万円は、父から毎年100万円ずつ贈与されたものだ。一時的に父の通帳に保管してあるだけだ」と税務署に主張しても認められません。
贈与する人と贈与される人の預金間で「出金と入金の事実があり、その金額が一致している」ことがポイントです。
一番確実に証拠を残す方法は、少し面倒かもしれませんが、贈与税の申告書を提出することです。
110万円を1万円だけ増やした111万円の贈与をして、1万円だけに対する贈与税1,000円を支払っていくという方法もあります。
贈与契約書をつくることも有効です。

2.贈与する金額を変える

毎年一定の金額を贈与していると税務署に「定期贈与契約」とみなされ、贈与した金額合計額を一括贈与したとされ、総額に課税されることもあるからです。
もちろん、お互いの通帳は、お互い別々に保管しておくことが大切です。
贈与する人、される人がお互いに通帳や印鑑、カードなどを所有、管理をするようにしてください。
もちろん、異なる印鑑を持つことが重要です。

贈与税の配偶者控除を使って賢く節税

贈与税にも配偶者控除があります。「おしどり贈与」と呼ばれており、最高2,000万円まで控除が認められる制度です。
贈与税の基礎控除が110万円ですから、110万円+2,000万円=2,110万円、つまり、その年に他の贈与がなければ、合計2,110万円までは非課税です。

もちろん、贈与税はかからなくても、不動産の登録免許税と、所得税が別途かかります。
たとえば、2,000万円の家と土地を夫婦間で贈与した場合を考えてみます。
贈与税はかかりませんが、登録免許税は、2,000万円×2%=40万円、不動産取得税は、2,000万円×3%=60万円、合計100万円かかり、これ以外にも、不動産登記で司法書士の報酬が必要になります。

また、この贈与の配偶者控除を受けるためには次の6つの要件を満たすことが必要です。

1.婚姻期間が20年を過ぎた夫婦間の贈与であること」

20年は正式な婚姻届を出してからの期間となります。
同棲期間や婚姻期間は含まれませんし、内縁関係にある人にも贈与することはできません。
正式な夫婦であることが条件です。

2.自分が住むための居住用不動産の贈与、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること

金銭よりも不動産の贈与がオススメです。
理由は土地や建物の贈与税の評価は、土地だと時価の80%、建物は60%程度と、通常時価よりも低く評価されるからです。

3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与によって取得した国内の居住用不動産、または贈与を受けた金額で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた人が実際に住んでおり、かつ引き続き居住する見込みがあること

4.土地または借地権のみの贈与の場合、家屋の所有者が配偶者または同居している親族であること

5.無税でも贈与税の申告を行うこと

特例を受けるためには申告をすることが条件になっています。
2,110万円以下の贈与でも、税務署に申告書を提出しなければなりません。

6.同一の配偶者から一生に一度のみ受けること

たとえば、2,500万円の家を贈与されたときは、2,000万円までの控除枠がすべて適用されますが、1,500万円の家を贈与されたときは1,500万円分のみが控除となり、残りの500万円を不動産以外の贈与で利用したり、翌年に繰り越したりすることはできません。

通常の贈与であれば、相続開始前3年以内の生前贈与は、さかのぼって相続税が課されるのですが、おしどり贈与の場合は加算の対象から外されます。

なお、居住用の土地家屋が夫名義のみだった場合、このおしどり贈与を使って、夫婦の共有財産にしておくのも節税策のひとつです。
将来自宅を売却することがあれば、「居住用財産の課税所得の3,000万円の特別控除」を、夫婦2人分で適用することができるからです。
夫1人なら3,000万円ですが、妻と2人なら合計で6,000万円の売却益まで税金がかかりません。

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