今回は、新・事業承継税制(以下、新税制)の適用を受ける際の要件である『入口要件』について掘り下げていきます。
新税制は、贈与・相続どちらでも使えます。
通常は承継計画に沿った実行が可能な生前贈与で行われるケースが多いため、今回は贈与のケースについて説明しますが、相続のケースについてもほぼ同じです。
入口要件としては、『あげる人』『もらう人』『その対象会社』の3点です。
贈与者は会社の先代代表者(贈与前に要退任)で、同族グループ(親族)の中で筆頭株主(議決権ベース)であり、同族グループ合わせて議決権の過半数を有する必要があります。
今般の改正によって、上記原則パターンに加えて複数の株主、例えば先代経営者の妻などが有する株式の贈与も新税制の対象となりました。
しかし、先代経営者からの贈与(原則パターン)後に行わないと適用されない点に注意が必要です。
事業承継により後継者となる者が、株式の贈与時に会社の代表者であり、同族グループ(親族)の中で筆頭株主(議決権ベース)で、同族グループ合わせて議決権の過半数を有することが求められています。さらに、贈与の場合には、贈与時に3年以上役員且つ20歳以上であることが必要です。
なお、今般の改正によって、後継者は最大3名まで認められることになった(議決権10%以上かつ議決権数の上位2名または3名であることが必要)ので、実際に使うかどうかは別ですが、集団指導体制の設計も可能となりました。
会社が中小企業者で、上場会社や資産管理会社、医療法人、社会福祉法人、税理士法人、もしくは風俗営業を行う会社に該当しないことが必要です。
中小企業者要件は、業種ごとに資本金要件か従業員数要件のいずれかを満たせば該当します。
一番小さい規模の基準でも、小売業で『資本金5, 000万円以下、または従業員50人以下』となっています。製造業では『資本金3億円以下、または従業員300人以下』です。
具体的な事例で見ていきましょう。
同族関係者(親族等)で議決権の過半数(75%+15%=90%>50%超)を有するため、甲は先代経営者要件を満たします。
甲が代表取締役を退任した後に、甲と甲の妻が有する株式90%を3年以上役員で20歳以上の後継者乙に贈与することで、乙は後継者要件を満たします。
そして、対象となる会社は、中小企業基本法に定める中小企業者で上場会社でも風俗営業会社でもなく、資産管理会社等に該当しなければ都道府県知事の円滑化法の認定を受けられます。
第三者と乙の有償取引は、贈与でないので新税制の対象外です。
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