亡くなった年の確定申告を代理で行う『準確定申告』とは

亡くなった年の確定申告を代理で行う『準確定申告』とは

個人事業主や不動産所得がある人など、一定の条件に該当する人は、確定申告を行ってその年の所得額を国に申告しなければなりません。

しかし、亡くなった人は確定申告をすることができないため、亡くなった年の所得については申告が漏れてしまいます。

そこで、代わりに相続人などが手続きをする『準確定申告』という制度があります。

 

被相続人の確定申告は相続人が代わりに行う

『準確定申告』とは、亡くなった人の代わりに相続人が確定申告を行うことをいいます。

準確定申告が必要となるのは、確定申告が必要となるケースと同じで、主に被相続人が以下の条件を満たす場合となります。

●フリーランス、自営業などの個人事業主
●不動産所得や株式投資などによる所得がある
●副業などで、給与所得以外に20万円を超える所得がある
●給与所得が2,000万円を超えている
●受給している公的年金が400万円を超えている
●源泉徴収されていない退職所得がある

また、準確定申告によって税金が還付される場合もありますので、準確定申告は必ず行うようにしましょう。

医療費控除や寄付金控除など、各種所得控除は、死亡日までに支払った分について適用されます。

 

 

準確定申告の期限と手続きの手順

準確定申告書は、被相続人の死亡当時の住所を管轄とする税務署に提出します。

申告義務者は相続人(包括受遺者を含む)です。

申告義務者が複数いるときは、全員が署名・押印して共同申告を行います(相続人等が別々に申告する方法もありますが、ここでは割愛します)。

 

準確定申告の期限は、申告義務者が『相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内』です。

これを過ぎると、延滞税などが課されることもあるため注意が必要です。

被相続人が1月1日から確定申告期限(原則3月15日)までの間に前年分の確定申告書を提出しないで死亡した場合は、前年分、本年分ともに、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内が提出期限です。

準確定申告の手順は次のとおりです。

 

①必要書類を収集する被相続人の収入が分かる源泉徴収票などの書類を収集します。所得控除を受ける場合には、控除証明書を用意します。

②準確定申告書を作成する提出が必要なものは、確定申告書の第1表・第2表、および付表です。提出する際には、表の一番上の『確定申告書』の前に『準』の文字を付け足し、氏名の欄は『被相続人 〇〇〇〇』のように記入します。付表には、各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入します。

 

相続が発生すると多くの手続きに追われることになります。

被相続人に準確定申告が必要かどうか、早めに確認するようにしましょう。

 

 

『令和3年度税制改正大綱』における相続税・贈与税の変更点

自民・公明両党が12月10日、『令和3年度税制改正大綱』を発表しました。

今回も、『住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税措置の延長』など、相続税・贈与税など資産に関わる税金の見直しがありました。

ここでは大綱の一部を抜粋してお伝えします。

(2020年12月10日時点での内容であり、以降変更される場合があります)

 

子や孫への住宅資金贈与を優遇 面積要件も緩和へ

【延長】
住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税措置2021年4月1日から同年12月31日まで、父母・祖父母などの直系尊属が、子や孫に住宅取得を目的とした資金を提供した際に適用される非課税措置を延長。

非課税限度額については、2020年と同額のまま据え置く方針で、消費税等の税率10%が適用される住宅用家屋の新築等では、1,200万円に引き下げられる予定だった非課税枠を1,500万円に、それ以外の住宅用家屋の新築等でも、800万円から1,000万円に拡大したままにする。

適用範囲については、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限を50㎡以上の物件から40㎡以上の物件まで広げる。

 

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置
父母・祖父母などの直系尊属から、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、租税回避の防止等に関する要件を加えたうえで、適用期限を2年延長する。

 

【制度拡充】
国外財産の相続税・贈与税の非課税
高度な外国人材の就労を促進する目的で、就労等のために日本に居住する外国人が、相続人等として取得する国外財産は、相続税等の課税対象としない。

 

 

土地の固定資産税は引き上げなし 宅地・農地所有者の負担軽減

【負担軽減】
土地にかかる固定資産税等の負担調整措置

2021年は土地の評価変えの年に当たるが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で地価が下がり、土地所有者の負担が重くなっていることから、負担軽減のための特例措置を講じる。

2021年度に限り、宅地等および農地において、固定資産税の課税額が2020年度を上回る場合には、課税額を2020年度のまま据え置きとする。

課税額が減る場合は、そのまま反映する。

 

【制度拡充】
非上場株式にかかる相続税の納税猶予の特例制度

後継者不足に悩む企業の現状を鑑み、事業承継を円滑に進めるため、非上場株式の相続において、相続税の納税猶予が受けられる対象範囲を拡大する。

後継者が相続開始の直前において、特例認定承継会社の役員でなくても、条件付きで本制度の適用を受けることができ、相続税が100%猶予される。

 

【延長】
土地所有権の移転登記等にかかる登録免許税の軽減措置

土地の売買による所有権の移転登記において、その登録免許税の税率を2.0%から1.5%に軽減する特例措置を2年延長する。

 

 

財産を承継した相続人の確定申告が必要になるケースとは

相続人として相続財産を得たとしても、確定申告の必要はありません。

ただし、相続財産による収益を得ることになった場合や、控除を受けたい場合などには、確定申告が必要になる可能性があります。

今回は、相続人が財産を相続した際に、確定申告しなければならない主なケースについて紹介します。

 

相続した財産を寄附した場合や収益を得た場合は確定申告も必要

確定申告とは、正確な納税額を国に報告するために必要な制度です。

確定申告で前年の所得額を国に申告することで、納めるべき所得税や住民税が計算されます。

相続財産を得たときに確定申告が必要ないのは、相続財産は所得税ではなく相続税の対象となるためです。

ただし、所得税の対象と判断されるものについては確定申告が必要になります。

 

【確定申告が必要なケース】
①相続財産を売却して収益を得たとき

相続財産を売却したときには、所得税や住民税を節税できる制度があります。

それが『相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』です。

この特例を使うためには確定申告を行わなければなりません。

 

確定申告が漏れてしまうとペナルティが課される可能性も

②相続人が財産を寄附したとき

相続によって得た財産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人など一定の団体に寄附したときには、寄附した財産については、相続財産に含まずに相続税を計算されるほか、所得税の寄附金控除を受けられます。

寄附金控除を受ける際には、確定申告が必要です。

 

③賃貸物件など収益がある財産を相続したとき

相続人がアパートやマンションなどを相続した場合、そこから得る賃料などの収益は相続人の収入となります。

よって、相続人は確定申告をして所得額を国に申告し、納めなければならない税金がある場合には、その額を納付する必要があります。