生前の対策でトラブル回避!相続財産に不動産があるケース

生前の対策でトラブル回避!相続財産に不動産があるケース

相続財産に不動産が含まれていると、不動産を引き継ぐ相続人を決めなければなりません。

相続人が決まらない場合、不動産は全相続人の共有財産となり、全員の同意なしに不動産の処分などができなくなるほか、共同所有者が死亡すれば、権利が複雑化してトラブルが発生しやすくなります。

今回は、生前にやっておきたい『土地の分割』について解説します。

 

共有財産として相続するとトラブルが起こりやすくなる

たとえば、父親が亡くなり、土地を3人の子どもが相続することになったとします。

「とりあえず、落ちついてから誰が相続するかを決めよう」ということで、一旦3人の共有財産として相続しました。

ところが、話し合いをする前に長男が死亡してしまい、土地は、残された2人の兄弟と長男の子どもたち3人の合計5人の共有財産になることに……。

 

相続が開始された後、遺産分割協議を行っている間に、相続人が死亡してしまった時の相続を『数次相続』といいます。

数次相続が起こると、上記のケースのように、土地の共同所有者が増えてしまうなどの厄介な事態となります。

トラブルのリスクも高まり、遺産分割協議が難航したり、土地を売ったり貸したりする際に所有者同士の意見がまとまらず、話が進まなくなったりすることも少なくありません。

 

冒頭のケースで、もしも長男が死亡した後に2人の兄弟も死亡してしまったら、それぞれの子どもたちが相続人となり、土地の共同所有者数が膨れ上がってしまいます。

相続が繰り返されると、最終的に一つの土地が何十人もの共有になることもあり得ます。

共同所有者が増えたとしても、関係が良好なら話がまとまる可能性も高いのですが、仲が悪かったり疎遠だったりすると、話し合いすらままならないこともあります。

話がまとまらずに放置しているうちに、新たな相続が発生し、事態がさらに深刻化する恐れもあります。

 

このような複雑な事態を避けるためにも、当初の相続人が3人だった時点で話し合いをしておくべきだったといえます。

 

 

生前に分割しておけば共有によるトラブルが防げる

相続人となる兄弟の仲が悪いなど、トラブルの種がすでにある場合には、不動産の所有者自身が生きているうちに、所有権の移転先について何らかの対策を取っておく必要があります。

何の対策もせずに亡くなると、死後に不動産を巡るトラブルが起こる可能性が高いからです。

関係性の悪い相続人同士で話し合い、解決に漕ぎつけることは、相続人にとっても負担の大きい作業です。

 

具体的な解決策として有効なのが、所有者が生きている間に不動産を分割して、それぞれの相続人に生前贈与してしまう方法です。

分割すると土地自体は狭くはなりますが、単独で所有できるため、土地を売ってお金に換えることも、土地に家を建てて住むことも、人に賃貸することも個々の判断で可能になります。

 

自分の死後に大切な家族が争うことになるのは、不本意なことでしょう。

円満な相続となるよう、生前にできることをやっておくのがベストです。

 

 

 

メリットと注意点を踏まえて活用!教育資金の一括贈与制度

「資産を子どもや孫に渡したい」という場合に多く利用されているのが、教育資金の一括贈与制度です。

この制度を使えば、1,500万円までは非課税で贈与することができます。

非課税枠が大きいため相続税対策としても有効ですが、一方で、細かなルールについても理解しておく必要があります。

今回は、教育資金の一括贈与制度を注意点とともに解説します。

 

教育資金の一括贈与には大きなメリットがある

教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度(以下、「本制度」)は、祖父母や親などの直系尊属から信託などによって教育資金の一括贈与を受けた場合に、1,500万円を限度として、贈与税を非課税にできる制度です。

定められた条件を満たす場合に、金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することで適用されます。

『一括贈与』と呼ばれていますが、必ずしも“一括で”贈与する必要はなく、限度額の範囲内で分割して贈与してもかまいません。

直系尊属からの贈与に限られるものの、非課税枠が大きいことから相続税対策における最大のメリットであるといえます。

 

節税対策としては、毎年110万円(贈与税の基礎控除額)を上限に暦年贈与する方法もありますが、被相続人がすでに高齢の方の場合、暦年贈与では年数がかかりすぎるケースもあります。

この場合、本制度を活用すれば、まとまった金額を非課税で贈与できますから、非常に使い勝手がよいといえます。

また、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用することも可能です。

 

なお、本制度は税制改正によって一部内容が変更されることがあります。

活用を検討する際は、改正の内容を確認しておくようにしましょう。

 

 

細かなルールに注意して安易に利用しないこと

一方、本制度には注意すべき点もあります。

 

●適用期限付きの特例措置である

本制度は2021年3月31日までの特例措置で、2020年12月時点では、制度を2年延長(2023年3月31日まで)する方向で検討が進んでいます。

いずれにしても、適用期限付きの特例措置であることには変わりありません。

 

●教育に関すること以外に使うことはできない

贈与された資金は教育資金として使う必要があり、用途を証明するために、領収書などの提出が求められます。

もし教育に関すること以外にお金を使った場合は、本制度の対象とならず、贈与税が課税されることがあります。

 

●原則、30歳までに全額使い切る必要がある

もし30歳になった時点で使いきれなかった資金がある場合は、教育資金管理契約終了時点で贈与があったことと見なされ、贈与税がかかることがあります。

 

●贈与から3年以内に相続が発生すると、相続税の課税対象となることがある

教育資金の贈与開始から3年以内に贈与者が亡くなった場合、条件に該当すれば、贈与額のうち相続開始までに使いきれなかった分が、贈与者の相続財産に組み込まれます。

 

メリットが大きい反面、細かな条件もある本制度は、安易に活用すると、後々、子や孫が贈与税を負担することにもなりかねません。

先を見越してベストな方法を見極めることが大切です。

 

 

 

不動産しか財産がない場合、相続はどうなる?

思い通りに相続を行うためには、事前の準備が大切です。

たとえば、子どもはおらず、兄弟とは付き合いがないような夫婦であれば、自宅はなるべく配偶者に遺そうと考えることが多いはずです。

しかし、預貯金が少なく、財産がほぼ『自宅』のみだった場合、ほかの相続人にも自宅の権利が渡ってしまうのでしょうか?

今回は、そのようなケースについて解説します。

 

相続人が配偶者だけではない点にまず留意することが必要

財産の所有者が亡くなれば、誰かがそれを受け継ぐ必要があります。

夫婦ふたりの家があるならば、家は残される配偶者に相続してもらい、これまでどおりの生活ができるように取り計らいたいと思うのは自然なことです。

しかし、子どもや直系尊属(両親、祖父母など)がいないとしても、相続人が妻だけとは限らないので注意が必要です。

被相続人に兄弟がいれば、その兄弟も法定相続人になり得るからです。

 

もし、自宅だけが所有財産であり、預貯金もほとんどないような場合、自宅は配偶者と兄弟が相続することになります。

条件を満たせば配偶者居住権が認められるため、配偶者は自宅に住み続けることはできますが、所有権の一部は兄弟が相続します。

 

 

長年連れ添った配偶者に所有権を100%渡すことは可能か

何もしなければ、自宅は兄弟と配偶者の共有財産になってしまいます。

しかし、遺言書で「配偶者に財産をすべて相続させる」と書いておけば、配偶者に100%相続してもらうことも可能です。

兄弟には、遺留分侵害額請求権が認められていません。

 

もう一つが生前贈与です。

生きている間に自宅の所有権を配偶者名義にしておけば、本人に何かあったとしても問題ありません。

婚姻期間20年以上で使える配偶者控除も、相続では1億6,000万円であるのに比べると、生前贈与では2,000万円と少ないこと、相続時に比べると登録免許税が高いというデメリットはありますが、検討の余地はあります。

相続が始まったあとにトラブルが起きないよう、早いうちから準備しておくことが大切です。