老後資金について、公的年金として受け取る夫婦2人分の老齢年金を柱として生活設計をしている家庭が多いと思われます。今回は、年金生活をしている夫婦のどちらか一方が亡くなった場合に、どのような年金を受給できるのかについて紹介します。
日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金保険の2階建ての構成です。厚生労働省の『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、約5万6,000円、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金の額を含めて約14万6,000円となっています。
年金生活をしている夫婦の場合、年金の被保険者が亡くなったときは、その人によって生計を維持していた遺族に遺族年金が支給されます。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、受給要件は亡くなった人の公的年金の加入状況と遺された家族の状況によって異なります。遺族基礎年金は、国民年金の被保険者や老齢基礎年金の受給権者であった人が亡くなったときに、受給要件を満たしている「子のある配偶者」または「子(18歳になった年度の末日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)」が、受け取ることができます。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者や老齢厚生年金の受給権者であった人が亡くなったときに、受給要件を満たしている場合、受け取ることができます。ただし、子のある妻または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、子に遺族厚生年金は支給されません。また、遺族が40歳以上65歳未満の妻の場合、生計を同じくしている18歳到達年度の末日を経過していない子がいないときなどは、65歳に達するまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算されます。
年金受給にあたっては、原則として支給事由が異なる複数の年金を受給できませんが、「老齢基礎年金と遺族厚生年金」、「老齢厚生年金と遺族厚生年金」は、65歳に達している場合に限って特例的に併給されます。ただし、遺族厚生年金は老齢厚生年金より年金額が高い場合に、老齢厚生年金に相当する額が支給停止となり、その差額が支給されます。これは、高齢の遺族に対する年金給付について、自分自身が納めた保険料を年金額に反映させる趣旨です。
それでは、遺された配偶者は、年金だけで暮らしていけるでしょうか。
先の厚生労働省の概況では、遺族年金受給者の平均年金月額は、令和3年度末で、国民年金が8万4,349円、厚生年金保険(第1号)が8万2,371円(併給される遺族基礎年金の額を含む)となっています。また、総務省の『令和4年家計調査年報』では、65歳以上の単身の無職世帯の支出の平均月額は15万5,495円、収入の平均月額は13万4,915円(うち社会保障給付は12万1,496円)で、家計収支は2万580円の赤字となっていました。よって一般的には、遺された配偶者が老齢年金と遺族年金の公的年金だけで老後の生活を支えていくことは困難だといえそうです。
遺された配偶者の老後の生活設計を考える際に、遺族年金がいくらもらえるかは重要です。老齢年金だけではなく遺族年金の年金額も試算したうえで、老後の単身生活をまかなっていくための資金を確認・準備していきましょう。