相続税の申告漏れに要注意!加算税に関する基礎知識

相続税の申告と納付の期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内ですが、遺産分割協議が調わないための申告遅れや、申告漏れがあると、追徴税が課される場合があります。申告漏れが起こりやすいケースや追徴税の種類などについて紹介します。

相続税申告の誤りを正す実地調査と簡易な接触

 国税庁は、資料や情報などから申告額に計算ミスがあると考えられる事案や、申告漏れがあると考えられる事案について税務調査を行っています。相続税の税務調査では実地調査のほかに、文書や電話による連絡や、来署依頼による面接を行う『簡易な接触』という税務職員が訪問しない調査も行っています。前ページで述べたように令和3事務年度の申告漏れ件数は5,532件、申告漏れ課税価格は2,230億円となり、前事務年度の1,785億円から24.9%増と大きく増加しました。

 申告漏れ・遅れが発生しやすいケースは、相続人の間で遺産分割協議が調わず申告期限が過ぎる、相続税の申告期限後に預貯金が見つかる、子・孫名義の預貯金が贈与と認められずに『名義預金』と看做される、趣味で集めていた骨董品などが財産とされる、といったものがあります。

 申告遅れ・漏れが判明すると、不足分である追徴税に加え『附帯税』が課されます。附帯税は大別すると、『延滞税』と『利子税』、制裁金である『加算税』があります。法定期限までに納税できない場合に、遅れた日数に応じて課されるのが延滞税、延納や申告書提出期限の延長などが事前に認められた場合が利子税と呼びます。

一括現金納付が原則の追徴税 悪質と判断されると税も高くなる

 加算税は『過少申告加算税』『無申告加算税』『不納付加算税』『重加算税』に分かれます。過少申告加算税は期限内に申告・納税をしたものの申告額が過少であり、修正申告をした場合や、過
少であったと税務署から更正された場合に課されます。新たに納めることになった税額の10%相当額となります。ただし、新たに納める税額が当初の申告納税額か50万円か、いずれか多い金額を超えた場合、その超えた分は15%になります。

 無申告加算税は正当な理由なく期限内に申告・納税しなかった場合に課され、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合(令和6年1月1日以降に法定申告期限が到来する国税からは300万円を超える部分は30%、無申告を継続し3年目からは50万円までは25%、50万円を超えて300万円までは30%、300万円を超える部分は40%の割合)を乗じた金額となります。期限後でも自主的に申告した場合は5%となる場合があります。

 不納付加算税は源泉徴収により納付すべき税額を期限内に納付しなかった場合に課され、納付すべき税額の10%です。自主的に納付した場合は5%となる場合があります。重加算税は隠ぺいや仮装など悪質な場合に課せられ、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%(令和6年1月1日以降に法定申告期限が到来する国税からは50%)の割合となります。追徴税は本来納めているべき税です。時効による免除などはなく、放置するほど増額し、悪質な場合は高額になることもあります。追徴税の可能性があると判明したら早急に納付しましょう。