充実の公的医療保険制度が退職後の生活防衛の基盤に

定年退職後は生活スタイルが大きく変わるため、生命保険の見直しも必要になってきます。保険の内容を老後に必要な保障に抑えることで、保険料の節約も可能に。今回は、老後生活のリスクを踏まえて、定年後の生命保険を見直すポイントについて紹介します。

その死亡保険金、本当に必要?現役世代とは大きく異なる必要額

 生命保険文化センターが発表した『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』によると、『老後生活に対する不安の有無』について「不安感あり」と答えた人は82.2%でした。不安の内容は「公的年金だけでは(生活費には)不十分」が79.4%で最も多く、健康などを害して「日常生活に支障が出る」が57.3%となっています。多くの人が老後の生活費と健康について不安を感じている結果となりました。

 定年退職後は収入が減少し、体力や気力の低下などから病気が増える年代です。そこで、固定費である保険を見直して無駄な出費を減らしつつ、同時に、老後の健康リスクに備える方法を考えていきましょう。

 見直しのポイントは医療保険を充実させ、死亡保障を減らすことにあります。定年退職時には子どもが独立し、配偶者には遺族年金が支給されるケースが多いことから、高額の死亡保険金は必要なくなります。前述の調査によると、夫婦2人の老後の生活費に最低いくら必要かとの質問には、月額平均23.2万円、ゆとりある生活費としては月額平均37.9万円との回答が集まりました。ここから、死亡保険金額は、『老後の死亡保険金=遺族の支出(生活費、住居費など)-遺族の収入(遺族年金、貯金、その他の収入など)』を目安に生活状況に合わせて考えましょう。

 同じ調査からわかった生命保険加入金額の平均は957万円(男性1,373万円、女性647万円)であり、年間払込保険料の平均は17.9万円(男性20.6万円、女性16.0万円)です。この金額も参考に、死亡保障を見直してみてください。

高齢者医療制度を正しく理解して本当に必要な医療保険を見極める

 次に、医療保障について考えてみましょう。体力が低下する年代になると、病気やケガの際の保障を手厚くしたいと考えがちです。しかし、日本では公的医療保険制度が充実しているため、まずはその内容を把握することが必要です。

 公的医療保険制度には『被用者保険』『国民健康保険』『後期高齢者医療制度』の3種類があります。65歳以上74歳までは、被用者保険と国民健康保険の間の不均衡を調整するため、前期高齢者医療制度が設けられています。

 前期高齢者医療制度は65歳からが対象ですが加入している保険に変更はなく、そのための手続きも不要です。前期高齢者の医療費の窓口負担割合は70歳未満だと3割、70歳~74歳では2割(現役並み所得者は3割)となります。

 75歳からは後期高齢者医療制度の被保険者となり、所得に応じて医療費の窓口負担割合が異なります。現役並み所得者は3割ですが、課税所得や年金収入、世帯における75歳以上の人数等により1割あるいは2割となります。

 60代以降の医療保険は、給付金と月々の保険料を見比べ、これなら貯蓄に回したほうがよいと思うほど高額な保険料にならないことが大切です。許容できる保険料で先進医療特約が付帯できるか、掛け捨て型の場合は貯蓄にはならないものの、大きな病気やケガの際に手元の貯蓄を減らさない方法として受け入れられるかなどを勘案し、慎重に検討しましょう。定年後は多くの人が減収となり、それまでの保険料のままでは負担が重くなります。早目に見直しを開始していきましょう。