休眠預金ってどうなるの? その現状と意外と知らない活用方法

子どもの頃に親がつくった口座など、何年も引き出しや預け入れをしていない預金口座があるという人は多いでしょう。このような口座が使われないまま10年が経過すると『休眠預金』となります。そこで今回は、休眠預金の現状と活用について紹介します。

毎年約1,200億円!日本における休眠預金の現状

 日本では、2020年4月に民法が改正されるまでは、銀行預金は5年間、信用金庫等の預金は10年間、入出金などの権利の行使がなければ、預金債権は時効によって消滅すると定められていました。

 金融機関はこのような預金を、決算時に『休眠預金』として利益に計上してきました(ただし、預金者からの要請があれば払い戻しには応じていました)。長期間取引されていない預金は毎年1,200億円程度発生しており、預金者への払い戻し分、約500億円を差し引いても、年間約700億円が金融機関の利益として計上されていました。

 そこで、このような休眠預金を広く社会に役立てるため、2018年1月にいわゆる『休眠預金等活用法』が施行されました。その目的は、休眠預金等にかかわる預金者等の利益を保護しつつ、休眠預金等にかかわる資金を民間公益活動の促進に活用することにより、国民生活の安定向上および社会福祉の増進に資することです。この法律により預金保険や貯金保険の対象となる預貯金等のうち、2009年1月以降に入出金等の取引が最後にあった日(最終異動日)から10年を経過したものは、休眠預金等として扱われることになりました。ただし、すべての預金等がすぐに休眠預金等になるわけではありません。最終異動日から9年を経過した預金等があり、残高1万円以上の場合は、金融機関から口座所有者が登録した住所に通知がされ、通知が届けば休眠預金等にはなりません。しかし、通知が届かず、取引をしないままであれば休眠預金等になります。なお、残高が1万円未満の場合には通知されません。

10年間取引のない預金は民間公益活動の資金に活用

 現在、10年間取引のなかった預金等は、一律、金融庁管轄の預金保険機構に管理が引き継がれます。この措置により、預金等がいったん休眠預金等になっても、口座所有者は金融機関で所定の手続きをすれば、原則として無期限で元金+利息の払い戻しを受けられるようになりました。

 休眠預金等となった資金の一部は、民間の公益活動のために活用されています。まず、預金保険機構が指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)に『休眠預金等交付金』を交付します。JANPIAは、公募により選定した資金分配団体に助成を行い、助成を受けた団体は、民間公益活動を行う実行団体を公募により選定し、助成や貸し付けを行います。そして、選定された実行団体が、子どもや若者、生活困難者の支援等の公益活動を行うことによって社会福祉の増進等に役立てています。

 このように休眠預金等は、社会課題の解決に活用されています。しかし、預金等は個人にとって大切な資産です。使わないからといって放置をせずに、適正な管理を心がけましょう。