不動産の見直しで相続税が還付? 起こりうるケースと注意点とは

いったん納付した相続税であっても、納め過ぎていたことがわかったときには、所定の⼿続きによって、還付(払い戻し)してもらうことができます。今回は、相続税の納め過ぎが⽣じる理由や相続税還付の⼿続きなどを説明します。

相続税の納め過ぎが⽣じるのは⼟地の評価がむずかしいため

 相続税が還付されるのは、相続税として納付した⾦額が本来納めるべき税額よりも多過ぎたことによりますが、このような相続税の納め過ぎはどうして発⽣するのでしょうか。その⼤きな理由の⼀つに、⼟地の相続税評価の⽅法がとても複雑になっていることがあります。⼟地の相続税評価額を算出するには、その⼟地の所在する地域や形状などに応じてさまざまな評価額の補正を⾏うことができますが、図⾯だけでは補正ができるかどうか判断することはむずかしいのです。また、税理⼠にはそれぞれ専⾨としている分野があり、相続税を専⾨にしていない税理⼠もいます。そのため、専⾨外の税理⼠にとっては、⼟地を正しく評価することがむずかしい場合もあります。また、相続税は⾃⼰申告による納税となっていますので、本来の納税額より相続税を多く納め過ぎていたとしても、税務署は知らせてくれないのです。

 このように、相続財産に⼟地が含まれていた場合には、納めた相続税と本来納めるべき相続税との差額が発⽣する可能性が⾼いといえます。⼟地の評価については、所在する地域や形状などに応じた評価額の補正において、さまざまな要因があります。たとえば、⾯積が1,000㎡(三⼤都市圏では500㎡)以上の広⼤な⼟地、不整形地(形が正⽅形や⻑⽅形でない⼟地)、路線に接する間⼝が狭い⼟地、傾斜地(⾼低差がある⼟地)などは、評価額を減額することができます。

 このような⼟地の評価を⾒直し、正しい評価で計算し直すことにより、相続税評価額が下がる場合には、減額更正の請求をすることで、納め過ぎていた相続税が還付されることになるのです。

相続税の減額更正の請求の期限と還付⼿続きの流れ

 すでに納めた税額が過⼤であった場合には、税務署に対して減額更正の請求ができます。更正の請求には期限が設けられており、相続税の法定申告期限から5年以内に請求をしなければなりません。相続税の法定申告期限は、相続開始があったことを知った⽇の翌⽇から10カ⽉以内に相続税の申告書を提出し納付しなければならないと定められていますので、更正の請求をするには、通常は相続が開始してから5年10カ⽉以内にしなければならないことになります。

 この更正の請求⼿続きの流れは、次のようになります。まず、相続税の申告で提出した書類(相続税申告書など)の内容を再確認します。納め過ぎていたかどうかを判断するためには、特に⼟地を中⼼に相続した財産の評価を⾒直してみることが重要です。そして、財産を正しく評価し直して、還付を受けるための必要書類(修正した相続税申告書、請求の書類など)を作成し、税務署に提出します。提出した後は、税務署で請求の内容が確認され、その結果が記載された通知書と還付される⾦額が記載された還付⾦振込通知書が送付され、指定した⼝座に還付⾦が振り込まれます。なお、⾃分で⼿続きをすることがむずかしい場合には、専⾨家に依頼することもできますが、専⾨家のほとんどは成功報酬制となっています。

 不動産の評価を⾒直すことで、相続税を納め過ぎていた場合には還付されるケースがあります。⼟地を相続して多額の相続税を納めたときなどは、⾃分で申告した場合に限らず、相続税を納め過ぎていないか、不動産の評価や相続税に詳しい専⾨家に相談してみることをおすすめします。