離婚時に夫婦の財産をどう分ける 『財産分与』それとも『贈与』?

離婚をする場合、夫婦が共同で築いた財産はどのように分ければよいのでしょうか。この場合、財産を分ける⽅法には、主に離婚後に⾏う『財産分与』と離婚前に⾏う『贈与』があります。今回は、贈与税の有無をポイントに、それぞれの概要や注意点などを紹介します.

財産分与は贈与税がかからない 請求できるのは離婚から2年間

 夫婦の財産とは、結婚⽣活で夫婦⼆⼈が築いた共有財産のことで、現⾦のほかに、年⾦、退職⾦、有価証券、⽣命保険、⾞や不動産などが該当します。離婚の際には、これらの財産を夫婦⼆⼈で分合うことができ、これが『財産分与』といわれる制度です。⺠法で「協議上の離婚をした者の⼀⽅は、相⼿⽅に対して財産の分与を請求することができる」と定められており、配偶者には離婚による財産分与請求権が認められています。

 この財産分与には、⼤きく分けて清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類があります。清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に形成した財産の清算としてするものです。扶養的財産分与とは、離婚後の元配偶者に対し⽣活保障や扶養として⾏うもので、慰謝料的財産分与とは慰謝料の性質をもつ財産分与のことです。なお財産分与は、⼀⽅が専業主婦(夫)であっても、公平に2分の1ずつ分けるのが⼀般的です。

 離婚による財産分与の場合は、原則として贈与税がかかりません。この場合は、相⼿⽅から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。ただし、財産分与においては注意が必要です。財産分与には期間制限があり、離婚成⽴後2年を経過したときは請求できません。また、離婚による財産分与に基づいて⾃宅などの不動産の名義を変更する場合には、離婚が成⽴していなければ登記ができません。なお、⾦銭以外での財産分与は、財産分与をする側に所得税が課される場合があり、財産分与を受けた側も財産移転の諸費⽤などが発⽣する場合があります。

贈与は贈与税がかかるのが原則 離婚前に⾏う場合には例外も

 ⼀⽅、離婚前に『贈与』によって配偶者に財産を無償で渡す場合には、離婚の準備のためであっても原則として贈与税がかかります。財産を渡す側と受け取る側のお互いの意思表⽰によって、贈与契約が成⽴したものと考えられるからです。

 ただし、次のような場合は、離婚前に⾏う贈与であっても夫婦間で贈与税はかかりません。贈与税には基礎控除が設けられており、1年間(1⽉1⽇〜12⽉31⽇)に受け取った財産が110万円以下の場合には、贈与税はかからず申告も不要です。また、夫婦にはお互いに扶養義務があるため、⽣活費に充てるために取得した財産で、通常必要な範囲内の贈与であれば、贈与税はかかりません。婚姻期間が20年以上の夫婦の間でそのほか⼀定の要件に当てはまる場合、居住⽤不動産またはそれを取得するための⾦銭の贈与については、おしどり贈与の特例により、受け取った財産額から基礎控除を含め最⼤2,110万円を控除できます。この場合は、定められた期限内の申告により特例の適⽤を受けられます。

 なお、財産分与であっても、婚姻中の夫婦間の協⼒やそのほかすべての事情を考慮しても過⼤である場合や、離婚が贈与税や相続税を免れるために⾏われたと認められる場合などは、贈与税の対象となる可能性がありますので、注意が必要です。このように、離婚にあたっては、夫婦の資産状況を正しく把握し、どのような場合に贈与税がかかるのかを理解したうえで、財産を分与するのか贈与するのかを検討することが⼤切です。財産分与の対象となる財産の範囲や贈与税などの判断は、専⾨家に相談することをおすすめします。