所有する土地を活用する方法として、自宅と賃貸住宅を一体化した賃貸併用住宅が注目されています。賃貸併用住宅は、家賃収入でローン返済の負担を軽減でき、さらに相続税対策としても効果があります。今回は、賃貸併用住宅の概要やメリットについて紹介します。
賃貸併用住宅とは、同一の建物に自宅部分と賃貸部分を併設した住宅で、賃貸部分については、アパートなどの共同住宅、店舗や事務所などに利用することができます。賃貸併用住宅は、自宅としてそこで生活しながら家賃収入を得ることができるのが特徴で、所有している土地に家を建てる、自宅を建て替える場合などに、土地と住まいを上手に活用する方法の一つとして注目されています。
賃貸併用住宅には、次のようなメリットがあります。まず、所有している土地が自宅を建てるには広すぎる場合や、子どもが独立し夫婦で暮らすには家が広すぎる場合などに、賃貸併用住宅にすることで適切なサイズの自宅を建てることができます。また、自宅部分が50%以上の賃貸併用住宅は多くの金融機関で住宅ローンを利用でき、賃貸部分の家賃収入を充てることで返済の負担も軽減できます。そして、要件を充足すれば住宅取得に対する不動産取得税の特例(1戸につき課税標準から1,200万円を控除)や住宅用地に対する固定資産税の特例(課税標準が200㎡以下は1/6、200㎡超は1/3に軽減)などが適用され減税につながります。さらに、後述するように相続税対策の効果があります。一方で、賃貸併用住宅は同じ建物に自宅部分と賃貸部分を併設するため、設計上の制約が大きく、一般の住宅と比べると売却や相続がしにくくなるなどのデメリットもあります。
賃貸併用住宅の検討にあたっては、こうしたメリットとデメリットを比較すると共に、自分のライフスタイルに合うか、資金計画に無理はないか、賃貸住宅の管理ができるか、将来売却する可能性はないかなどを確認することが大切です。
賃貸併用住宅は、相続税対策としても活用でき、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。まず、賃貸併用住宅は所有者の使用に制限があるため、相続税評価額が一般の住宅よりも低くなることがあります。自治体によって異なりますが、要件を充足すれば、賃貸部分については借家権割合(現在は全国一律30%)が減額され、土地についても貸家建付地として借地権割合(地域によって異なります)に借家権割合を乗じた割合(借地権割合が50%であれば15%)が減額されます。また、賃貸併用住宅の敷地は居住用部分と貸付事業用部分について、それぞれ一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用することで相続税評価額を減額することができます。具体的には、自宅部分は特定居住用宅地等として330㎡を限度に80%減額でき、賃貸部分は被相続人などの貸付事業用の宅地などに該当すれば200㎡を限度に50%減額できます。そして、賃貸併用住宅は、家賃収入を得られるため、長期的な資産形成にも役立ちます。住宅ローンの返済期間中は家賃収入を返済の一部に充ててローンの負担を軽減でき、ローンの返済完了後、家賃は毎月の収入となります。この家賃収入は長期にわたって継続的に見込めるため、資産形成につながり、老後においては年金以外の安定した収入源として期待できます。
賃貸併用住宅は、節税効果や住宅ローンの利用などメリットがある一方で、設計上の制約が大きい、売却や相続がしにくいなどのデメリットもあります。賃貸併用住宅を検討する場合には、これ
らのメリットとデメリットを比較して、自分に合った住まいづくりをするようにしましょう。