金(ゴールド)や美術品・骨董品などの「実物資産」は、現金や不動産と同様に相続税の対象となりますが、その評価方法や税務調査には特有の注意点があります。今回は、実物資産を所有する際に知っておくべき、税務上のルールと実務のポイントを紹介します。
相続が開始すると、現金や株式などの金融資産や不動産のほかに、財産価値がある「実物資産」も原則として、相続税の課税対象となります。
対象となる主な資産は、以下のとおりです。
・金地金(インゴット)、金貨、プラチナ
・美術品(絵画、彫刻)、骨董品、刀剣
・宝石、時計
・書画、アンティーク家具、クラシックカー
相続したこれらの財産は、原則として「被相続人が亡くなった日の時価」で評価されます。
具体的な評価方法は、金地金、金貨、プラチナの場合は、「業者が公表している買取価格」を基準にしますが、国内で貨幣として通用する記念金貨は、「額面金額」で評価します。
美術品や骨董品などの場合は、専門家による鑑定評価や類似品の取引価格を参考に算出します。
なお、1個または1組の価格が5万円以下のものは、個別に評価計上せずに、ほかの家庭用財産などとまとめて「家財一式」として一括計上することが可能です。
注意すべきは税務署の視点です。
税務署は過去の確定申告や預貯金の入出金履歴、実地調査などを通じて、資産の保有状況を詳細に把握しています。
特に高額な資産は、購入や売却の経緯が確認されるケースが多く、意図的な隠匿や申告漏れは厳しく指摘されるリスクがあるため、正確な把握が欠かせません。
実物資産の相続では、まず「誰の所有物か」という帰属が問われます。税務調査では、単なる名義だけでなく、誰が実質的に管理していたかという実態も重視されるため、相続人名義であっても被相続人の管理下であったものは、相続財産とみなされる可能性があります。また、鑑定書や購入時の領収書がないと、適正な評価が困難になり、申告後に税務署と見解が食い違えばペナルティを課されるおそれもあります。なお、生前に資産の「贈与」や、特定美術品の美術館や博物館への「寄託」を行う場合には、契約書の作成など適切な手続きが必要です。
こうしたトラブルを回避するため、次のような生前対策を推奨します。
①保有資産のリスト化
資産の所在と種類、購入価格、入手経路などを整理しておく。
②専門家による簡易鑑定
高額と思われる資産については、あらかじめ評価の目安を把握しておく。
③名義と管理の明確化
資産を家族に贈与した場合は「贈与契約書」を残し、実質的な管理も移転しておく。
実物資産は、インフレに強いという魅力がある一方で、相続時には税務当局から「隠し財産」と疑われやすいという側面もあります。特に、近年価格が高騰している金(ゴールド)などは、数年前の感覚とは異なる高額な評価になることも珍しくありません。適正な評価に基づき、漏れなく申告することが、大切な資産を次世代へ円滑に引き継ぐための近道となります。