かつて「タワマン節税」と呼ばれた手法に対し、市場価格と相続税評価額の乖離を是正するため、2024年1月に評価ルールが改正されました。改正から1年以上が経過した今、あらためて新しい仕組みの要点と実務への具体的な影響を整理します。
「タワマン節税」は、マンションの市場価格と相続税評価額の差を利用した手法です。改正前は、戸建て住宅の評価額は市場価格の約6~7割でしたが、タワーマンションでは評価額が市場価格の3~4割程度に留まるケースも多く、租税負担の公平性が問題視されていました。2022年の最高裁判決において過度な節税が否認されたことを受けて、課税の公平性を保つように評価ルールが改正されました。この改正は、「タワマン」に限らず、すべての区分所有マンションが対象となる点に注意が必要です。
新ルールでは、新たに「評価乖離率」が導入されました。これは、築年数、総階数、部屋の所在階、敷地持分狭小度の4項目から算出され、評価額が市場価格の「6割」に満たない場合、6割に達するまで評価額が補正(引上げ)されます。
これにより、高層階や、築浅物件であるほど、従来の評価額からの上昇幅が大きくなる傾向があります。
具体的には、都心の高層階にある敷地が狭い築浅の物件ほど評価額が上がりやすく、地方の低層階で築年数が古い物件は影響を受けにくいと想定されます。特に新築マンションは影響が大きいため、購入時のシミュレーションを修正する必要があります。今後は従来の計算に加え、評価乖離率の算出も必要となるため、毎年の路線価公表に合わせた定期的な評価額の見直しを行うことをおすすめします。
評価ルールの改正に伴い、相続対策についても再考が必要です。マンションに「現金や有価証券よりも評価額が抑えられる」というメリット自体は残っていますが、「買えば大幅に節税できる」という単純な図式は通用しなくなりました。今後は、節税のみを目的とするのではなく、立地や収益性といった資産価値を重視した、本質的な物件選びが重要となります。また、改正によりマンションの評価額が上がる場合は、納税資金が確保できているかどうかを再確認する必要があります。
改正により評価額が数千万円単位で上がるケースもあり、想定していた納税資金が不足するおそれもあります。手元資金だけで不足する場合は、生命保険の活用や資産の売却なども視野に入れるべきでしょう。また、不動産の遺産分割では、トラブルを避けるため、共有で相続せずに、「分けやすさ」を基準に、誰がどの物件を継承するかをあらためて検討する必要があります。
新ルールの導入で相続税対策の常識は大きく変わりました。一方で、マンションの評価額について、時価の6割という基準が明確になったことで、将来の納税予測が立てやすくなった側面もあります。地価上昇が続く今こそ、最新の評価額を確認し、実情に即した相続対策へとアップデートしましょう。