息子たちに隠していた「離婚歴」を消すことは可能?

息子たちに隠していた「離婚歴」を消すことは可能?

今どき離婚経験者は珍しくありませんが、その事実を伏せておきたいと考えている人もいらっしゃいます。
しかし、戸籍には過去の婚姻関係が記載されています。
離婚歴を戸籍から消して「なかったこと」にできるのでしょうか?

※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。

大原妙子(仮名)さんは、夫の銀次(仮名)さんと2人の息子がいます。
銀次さんとは年齢が近いことから、夫婦そろって相続対策を考えることにしました。

実は妙子さんは、銀次さんと結婚する前に、他の男性と結婚して離婚した経歴があります。
息子たちにはこれまで30年ほど言い出す機会を失い、ずっと伏せていました。

「私の遺産相続になったら、戸籍をさかのぼることになる。
そのとき息子たちが離婚歴を知ったら、ショックを受けるかもしれない。
なかったことにできないものでしょうか」と、相談に来ました。

最も簡単かつ現実的な手段「転籍」の特徴と注意点

結婚して婚姻届を出すと、一方が筆頭者、もう一方が配偶者になって夫婦の戸籍がつくられます。
離婚すると配偶者は除籍され、名前の上に大きな×印がつきます。
筆頭者の戸籍には誰といつ結婚したのかという記録が残ります。
のちに再婚して離婚した場合も同様です。

除籍された配偶者は、原則的に結婚前の親の戸籍に戻ります。
とはいっても、結婚して親の戸籍から抜けたとき、子である自分の名前には×印がつくのです。
その記録は消えずに末尾に新たに名前が追加されるため、離婚して戻ってきたことが一目で分かってしまいます。

配偶者は、離婚時に自分が筆頭者になって新戸籍を編製することも可能。
この場合、戸籍に×印がつくような見た目の変化はありません。
これなら離婚した事実を隠せそうですが、一人で新戸籍を編製するのはあまりないことです。
結局は「離婚など何か事情があったのでは」と疑われてしまい、やはり不自然です。

ところが違和感なく戸籍謄本から離婚の事実を消す方法があります。それが「転籍」です。

本籍地を移すと、除籍された者に関する事項は転籍地の戸籍に引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)。
つまり、自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消えるのです。

転籍は非常に簡単で、日本全国どこでも自由に転籍先を選べ、手続きも現在の本籍地か転籍先のどちらかの役所に届けを出すだけで可能。最も現実的な手段です。

ただし、離婚歴を戸籍謄本から消すことはできても、原戸籍(改製される前の戸籍)や除籍謄本(戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)から完全に消すことはできません。
これらは正当な理由があれば、本人や法的関係者でなくても取得が可能なので、離婚歴を完璧に隠すことは不可能といえるでしょう。

「今の関係が変わるわけではないから大丈夫」。
納得した妙子さんは、近々息子たちに離婚歴を告白することを決心しました。

POINT

・戸籍謄本から離婚の事実を消す方法として「転籍」が最も現実的
・離婚歴は現戸籍や除籍謄本から完全に消すことは不可能で、正当な理由があれば、これらの取得が可能
・完璧に離婚歴を隠すことは難しい

記事提供:相続・贈与相談センター本部
税理士法人エクラコンサルティング

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