財産が未分割だと税務上の特例を適用できず、多額の税金を払うことも

財産が未分割だと税務上の特例を適用できず、多額の税金を払うことも

相続が発生すると行わなければいけないのは遺産分割協議です。
しかし、親族の事情から分割協議が難航するケースもあります。
それでも相続税申告期限は待ってくれません。
そうなると未分割のまま申告しなければいけなくなりますが、一旦多額の税金を納めなければいけません。

※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。

木崎妙子(仮名)さんは昨年、夫の慎一(仮名)さんを亡くしました。
そこで遺産分割となるのですが、大きな問題に直面しました。

木崎家には長男・圭介(仮名)さんと次男・龍太(仮名)さんの2人の息子がいます。
圭介さんは独身で妙子さんと同居。派遣社員として働いています。
龍太さんは10年前に慎一さんと妙子さんに結婚を猛反対され、勘当同然で家を飛び出し音信不通。
どこに連絡すればいいのか皆目見当がつかず、遺産分割協議ができない状態でした。

次男が音信不通で遺産分割協議ができない

遺産分割協議ができなくても、相続税の申告は待ってくれません。
龍太さんを探し出す手掛かりがつかめないまま、10ヵ月の申告期限が近づいてきました。
仕方ないので妙子さんは財産を未分割のまま相続税を申告することになりました。

相続財産が未分割の場合は、次の規定の適用が受けられません。

相関図

1.配偶者に対する相続税額の軽減特例

配偶者が相続または遺贈により財産を取得した場合には、下記の算式により計算した相続税額が軽減されます。

相続税の総額×(a)/(b)
(a)次のいずれか少ない金額
イ)相続税の課税価格の合計額×配偶者の法定相続分
 (この金額が1.6億円に満たない場合は1.6億円)
ロ)配偶者が実際に取得した相続財産の価格
(b)相続税の課税価格の合計額

つまり、配偶者が取得した財産については、法定相続分まで相続税が課されないことになります。

2.小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

自宅や事業で使っている宅地については、所有や利用の継続等一定の条件のもと、その評価額を一定額減額することができます。

これら規定の適用を受ければ、妙子さんは相続税を払わなくて済みました。
しかし、龍太さんがいない以上、遺産分割ができません。
妙子さんは多額の相続税を支払うことになったのです。

相続税の申告期限までに分割協議が整わなかった場合には、未分割の状態で申告書を提出するとともに「相続開始後3年以内の分割見込書」を提出し、申告期限後3年以内に分割協議が整った場合には、各相続人がそれぞれ取得することになった相続財産に基づいて修正申告または更正の請求を行う際、上記の適用を受けることができます。

POINT

  • 遺産を未分割のままにしておくと、さまざまな規定の適用が受けられない
  • 音信不通の親族がいる場合は、何らかの対策を取ろう
  • 目の前の問題は先送りにせず、早めに手を打とう

記事提供:税理士法人エクラコンサルティング