3.遺言書があるかないかを確認する - 相続が発生してから相続税を申告するために行う8つのこと

相続が発生してから相続税を申告するために行う8つのこと~3.遺言書があるかないかを確認する

死亡届を出して、葬儀を終えた後に、残された親族が次に行うのが「遺言書」確認となります。
相続の権利を持っている相続人といいます。相続人が遺産を分けるためには、どのような配分で分けるかがとても重要になります。

誰にどれだけの財産を分けるのかということが、細かく明記されている遺言書があれば、その遺言書通りに財産を分けることになります。

しかしながら、遺言書がない場合には、相続人同士が話し合い(遺産分割協議)によって、遺産を分けることになります。
その際に、重要になるのが各々の相続人が持っている法律に基づいた配分である法定相続分
最近は、相続人の法律意識の高まりによって、法定相続分通りに分けて欲しいと、揉めるケースも少なくありません。
とはいえ、法律で分けるといっても実際に難しいケースが多々あるのです。

法律で相続財産を分けるのは難しい

たとえば、葬儀費用ですべて消えてしまうようなわずかな預貯金と相続財産が自宅だけだった場合。
法定相続分通りに、配偶者と子ども達で半分ずつ分けるといっても、不動産は簡単に分けることはできないのです。

兄弟同士が喧嘩をしていて、どうしても分けなければいけない事情があるのであれば、不動産を売却して現金化し、それを法定相続分通りに分ける方法しかありません。
その場合、多額の相続税がかかってしまうこともあるでしょう。

一方、法定相続分通りに分けられる現金があったとしても、油断は禁物です。
親の介護などで一部の相続人に大きな負担がかかった場合、法定相続分通りに分けてしまったら、大きな不満が起きる可能性もあります。

もちろん、その場合は、代償分割といって、その分の代償金を介護の負担をした相続人に支払う方法を採用することも可能です。
しかし、兄弟姉妹同士で仲が悪い場合は、そうした話し合いもうまくいかなくなることもあります。
法律がきっかけで、相続が泥沼になったというケースも少なくないのです。

遺言書が後から見つかれば、遺産分割はやり直しになる!?

それぞれの家族の事情はさまざまで、相続財産の種類も多種多様です。
法律によって一律に分けるということはできないのです。

そこで、遺言書が必要になってきます。遺言書があれば、それぞれの家族の事情に合わせた遺産配分が可能ですし、ムダな争いを避けることが出来ます。
また、亡くなる以前にさまざまな相続対策を打てるので、結果的に節税につながるメリットも大きいのです。

ですので、まずは遺言書があるのかないのかをきちんと確認をしてください。
遺産分割協議の後で、遺言書が後から見つかった場合、ケースによっては再度、遺産分割を遺言書に沿ってやり直さなければならないこともあります。
このように遺言書の確認は非常に重要なのです。

エンディングノートには法的効力はない

遺言書を探している過程で、エンディングノートが見つかるケースもあります。
エンディングノートとは、自分にもしものことがあったときに家族や親族に伝えておきたいことを記入するノートのことになります。

エンディングノートの具体的な中身は、延命治療を望むか否か、介護が必要になったときに希望すること、財産と相続のこと、葬儀に対する考え方や自分史などです。
しかしながら、エンディングノートに相続財産の配分の方法や特定の相続人に有利なことが書かれていても、法律上、正式な遺言書の効力はありません
なぜかといえば、遺言書にはきちんとした書式や書くためのルールが存在するからです。
遺言書の書式にそって、一定のルールに沿って書かれていないものは、遺言書として認められないのです。

ある人の事例です。
その方は、自分の父親の遺品を整理していて、愛用していたワープロから相続財産の配分についての内容のファイルを発見しました。
しかし、遺言書は自筆で書くなど、法律で定められたルールに従って残す、決まりがあります。
そのため、ワープロで書いた遺言書は無効になってしまったとのことでした。

では、法律的に有効な遺言書はどのようなものがあるのでしょうか?
遺言書は大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類があります。

それぞれ説明をしていきましょう。

自筆証書遺言

その名の通り自分で書く遺言書の形式です。
自筆証書遺言には、遺言書の全文と日付、すべて自分で書き、押印するということが決められています。
費用をかけずに1人で書くことができるだけではなく、中身も秘密にしておくことができるというメリットがあります。

一方、デメリットとしては、自筆証書遺言によって書かれた遺言書は、家庭裁判所で検認というプロセスを受けることが必ず必要になるということです。
検認には、遺言書の存在と内容を法定相続人に伝えるということ、偽造されないように、遺言書の状態を保存するために行われます。
検認を受けていない遺言書で相続財産を分けようとしても法律上、不可能な場合もあるので、遺言書を見つけたら、勝手に開けずに、相続人全員の立ち会いのもと家庭裁判所で開封してください。
勝手に開けたり、破いたりすれば、5万円以下の過料などが科される場合があります。

公正証書遺言

これは被相続人が生前に公正証書役場に行って、公証人という役人の立ち会いのもと、口述筆記で遺言書を作成する形式です。
原本が役場に保管されるので紛失の恐れもありません。
遺言書を探すときも簡単です。
全国のどこの公証役場からも被相続人の氏名を入力すれば、ただちに検索することができます。

もちろん、家庭裁判所による検認の作業も不要です。
ただし、作成するには、相続財産の額に応じた手数料などがかかります。
遺言書の作成で心配ならば、相続税に詳しい税理士などの専門家に依頼することをお勧めします。