2017年2月に日銀が発表した金融機関の「貸出別先貸出金」によると、
不動産融資が2015年と比べて 2016年は15.2%上回る、12兆2860億円だったことがわかりました。
1977年以来過去最高とも言われており、一部では不動産バブルの様相を呈しているとも伝えられています。
なぜこのように不動産融資だけが拡大したのでしょうか?
日銀の調べによると金融機関全体の総貸出は、477兆9094億円。そのうち不動産融資に占める割合が2016年12月末で70兆3592億円と貸出全体の15%になっています。
ただし、不動産融資の新規融資の伸び率が2015年から2016年で倍以上に伸びているとのこと。
不動産への融資だけが増えているのではないかと、金融庁は懸念を示しています。
ここまで不動産向けの融資が増えたのには、3つの理由があります。
第一には、2016年に日銀がマイナス金利政策を導入してから、金融機関が資金の運用先選定に悩んでいるということです。
融資をするにも安全な運用先がないということが悩みのタネでした。そうした問題を解消するための運用先として不動産への融資が注目を集めました。
第二には、2015年の税制改正によって、相続税の課税対象が広がり、実質的に増税になったということが大きいでしょう。
地方の主要都市で土地を持っている資産家を中心として、節税対策のためのアパート建築がブームになっています。
所有している土地にアパートを造ると、貸家建付地として評価されて、土地の評価が大幅に減らすことができることから、地方の金融機関と不動産会社が協力して不動産融資を拡大しているのです。
国土交通省の住宅着工件数によると、アパートなどの貸家建設の着工数は2016年度4月から12月の間だけで前年同月比12%増の33万戸に達しています。
こうしたアパート建築向け融資は、相続税の増税だけではなく、昨今のサラリーマンを中心とした不動産投資のブームの影響も大きいと言われています。
第三には、2020年に開催される東京オリンピックに関連する土地開発で地価が上昇したことです。
都心の商業地や高層住宅マンションなどへ投資する不動産投資信託(REIT)への期待が高まり、運用先に悩む金融機関のREIT向け融資が一気に膨らみました。
不動産への偏りを是正するには、企業の設備投資の増加が不可欠。
金融機関の融資が「不動産だけに偏る」という問題を受けて、金融庁は金融機関の監視を今後、強めていくとしています。
しかしながら、不動産への融資を制限すれば、運用先に悩んでいる金融機関の経営を圧迫することにもなるという声も現場では聞かれています。
日本経済が本格的にデフレを払拭し、企業の設備投資が増え、事業融資が増えてくるまでは、まだまだ不動産への融資が今後も継続しそうな情勢です。
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