高齢になるほど認知症のリスクが高まります。
もし、認知症によって判断能力がなくなってしまうと、
たとえば、自分の判断で財産を処分することができなくなります。
そこで今回は、万が一の備えとして覚えておきたい、
『民事信託』『成年後見』『生前贈与』の3つの制度を紹介します。
資産のみ管理を任せる民事信託 身上監護つきの成年後見
認知症になる前の相続対策として考えておきたい主な制度を3つ、順に説明します。
民事信託を利用すると、財産を管理してくれる人(受託者)と本人(委託者)が信託契約を結ぶことにより、
財産を受託者に移転し、その管理や運用を受託者に任せることができます。
民事信託の大きなメリットとしては、
認知症などによって委託者の判断能力が衰えてしまっても受託者が財産の処分などをできること、
それから、民事信託は遺言の役割も担うことができる(遺言代用信託)ことなどがあげられます。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度という2つの種類があります。
この成年後見が民事信託と大きく異なる点は、財産管理だけでなく身上監護まで仕事に含まれることです。
身上監護とは、前述した施設の入所契約の締結や介護サービスの締結などの法律行為を行うことを指します。
生前に財産を渡したいなら相続税対策にもなる生前贈与
生前贈与とは、自分の意思で別の人に無償で財産を渡すことを言います。
生前贈与を行うと相続税の課税対象となる財産を減らすことができますが、
生前贈与の際に受贈者に贈与税が課税されます。
贈与者から受贈者が生前贈与を受ける際に、
下記の相続時精算課税制度の要件を満たす場合は、以下のふたつのうちどちらかを選択できます。
●暦年課税
受贈者が1月1日~12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、
その超えた分に対して贈与税が課税されます。
●相続時精算課税
贈与をする年の1月1日において60歳以上の父母
または祖父母から贈与を受ける年の1月1日において
20歳以上の子または孫へ贈与する場合に、選択することが可能です。
相続時精算課税を選択した後は暦年課税は利用できなくなりますが、
受け取った額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税は課税されなくなります。
ただし、相続時には、生前贈与額分を相続額に組み込んで相続税を支払う必要があるので、
いわば『生前贈与の贈与税を、相続時まで先送りする制度』といえます。
生前対策の選択肢は色々あります。そして、それぞれの制度がカバーする範囲や役割もさまざまあります。
しかし、認知症を発症してしまうと「意思能力のない人」と扱われる可能性があり、
相続対策は利用できなくなります。
なるべく元気なうちに対策を検討しておくことが大切でしょう。
元気なうちの資産形成はとても大切です。定期預金のほか、
株式や投資信託、確定拠出年金など、さまざまな選択肢があり、
国も所得控除を設けるなどして優遇しています。
今回は、老後の資産形成に深い関わりのある国の制度、『NISA』と『iDeCo』について解説します。
老後の資産形成を有利にする2つの税制について知ろう
NISAとは、非課税枠内の株式や投資信託の運用益が非課税になる制度のことで、
正式名称は『少額投資非課税制度』といいます。
通常、株式投資や投資信託などの投資を行い、配当金や売却益などの利益が出た場合には、
その利益に対して約20%の税金がかかります。
しかしNISAを活用した場合は、この20%の利益にかかってくる税金が、非課税となるのです。
NISAには、『一般NISA』と『つみたてNISA』があります。
簡単に説明すると、一般NISAは、1年間に120万円までの非課税枠が5年間使えます。
一方、つみたてNISAは1年間40万円までの非課税枠が20年間使えます。
まとまった資金を一括で運用したい場合は一般NISA、
積み立て型で運用したいならつみたてNISAがよいでしょう。
一方、iDeCoは『個人型確定拠出年金』と呼ばれ、
公的年金にプラスして老後のための資産を積み立て・運用できる制度です。
運用益が非課税になるのに加え、掛金も全額所得控除となる大きな税制メリットがあります。
掛金の上限金額は加入者の職業等によって決められていますが、NISAに比べると低めです。
また、あくまで年金なので、原則として60歳までは資金を引き出すことができません。
さらに、公的年金と違って自分で運用する必要があり、
iDeCo商品としては、預貯金や投資信託、保険商品などがあります。
結局どちらを選べばよい?NISA と iDeCo の違いとは
次に、NISAとiDeCoの主な違いについて解説します。
老後の資産を徐々に積み立てていきたい場合、つみたてNISAとiDeCoのどちらを選ぶかで迷う人もいるでしょう。
悩んだら、次のポイントを軸に考えることができます。
❶NISAはいつでも引き出せるが、iDeCoは原則として60歳まで引き出せない
❷つみたてNISAは加入において年齢の上限がないが、iDeCoは20歳以上60歳未満となっている
❸iDeCoは運用益のほか、掛金が全額所得控除の対象になる。また、資産を受け取る際にも税制優遇がある
このほか、iDeCoにも障害年金のような障害給付金制度があり、
『70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等が、
傷病になっている一定期間(1年6カ月)を経過した』場合は、給付金が出ることも覚えておくとよいでしょう。
もちろん、NISAとiDeCoの併用も可能です。
収支に余裕があれば、両方に加入して、しっかり老後資金を貯めることもできます。
将来のためにも、使える制度はどんどん活用していきましょう。
死亡退職金は亡くなった人が所有していた財産ではないのに、相続税が課税されて驚いた…。
このように、相続財産に含まれないとされている財産であっても、
みなし相続財産として相続税の対象になるものはいくつかあります。
今回は、相続税の対象になる財産について説明します。
相続税は死亡した人の財産を相続などで取得した時にかかる
まず前提となるのが、『相続財産には、相続税の対象になるものとならないものがある』ということです。
また、『相続税の対象となる財産には、みなし相続財産も含まれる』ということも知っておきましょう。
では、相続税がかかる財産とはどういったものでしょうか。
国税庁によれば、相続税は
『死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その取得した財産にかかる』としています。
具体的には、『現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など
金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのもの』が対象です。
また、みなし相続財産とは、被相続人が亡くなった日には財産として持っておらず、
被相続人の死亡を原因として相続人が取得した財産のことです。
具体的には、先ほど例に挙げた死亡退職金(被相続人の死亡日後3年以内に支給が確定したもの)や
生命保険契約の死亡保険金(被相続人が保険料を負担していたもの)、
特別寄与分などが、みなし相続財産として課税対象になります。
非課税になる財産 相続財産に含まれない財産
では、相続税が非課税になる財産とはどのような財産なのでしょうか。
国税庁によれば、墓地や弔慰金、心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利のほか、
相続や遺贈によって取得した財産で
相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う
特定の法人への寄附金等により贈与した財産は、相続税が非課税とされています。
また、死亡退職金や生命保険契約の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
しかし、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、
非課税枠以内の金額であれば相続税が非課税となります。
相続財産と相続税の関係は、決して単純ではありません。
突然、相続が始まった際に慌てないように、
相続財産に含まれるもの・含まれないもの、非課税になる財産についてよく理解しておきましょう。