相続の事前準備で抑えておきたい2つのポイント

相続の事前準備で抑えておきたい2つのポイント

相続は誰もが人生で一度は必ず経験する一大イベントになります。

親として子どもたちに自分の財産を相続させる側になることもありますし、子どもとして親の財産を相続することもあります。

もちろん、人生の一大イベントですから、いろいろな準備が必要になります。
親として自分の財産を相続させる場合には、誰に何をどれだけ相続させるかということも考えなくてはいけませんし、そもそも相続させるための財産がどのくらいあるのかということを事前に調べておく必要もあるでしょう。

仮に、マイナスの財産である借金がある場合には、プラスの財産と相殺してどのくらい残るのかということをシミュレーションする必要も出て来るでしょうし、あまりにも借金が多い場合は、相続を放棄するように、相続人である配偶者や子どもたちに、その旨を伝えておく必要も出て来ます。

一方、子どもとして親の財産を相続する場合には、誰がどれだけの財産が相続するのかということが気になることでしょう。
そして、財産を相続をするのはいいけれども、相続税がかかるのか、かからないのかということが心配になりますし、課税されるとすれば、どのくらいの税金がかかってくるのかも気になるところです。
もちろん、マイナスなのかそれともプラスなのか相続をする財産の全貌を知りたいという子どもたちもいることでしょう。

こう見て来ると、まず、事前準備のポイントは2つあると思います。
ひとつは「誰にどれだけ、財産を分けられるのかを知る」こと。
もうひとつは、「財産がどれだけあるのかを把握する」ことです。

まず、第1のポイント、「誰にどれだけ財産を分けられるのかを知る」ことから見ていくことにしましょう。

被相続人の配偶者は必ず相続人になる

まず、相続する人は法律で決められています。
法律で定められた相続人を法定相続人といいます。
法定相続人は、大きく分けて次の2種類に分けられます。
配偶者たる相続人」と「血族相続人」の2つです。

では、「配偶者たる相続人」について、詳しく見ていくことにしましょう。

相続をさせる側になる被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
婚姻の期間は関係ありません。
たとえ結婚して1ヵ月後に被相続人が亡くなっても、相続人となることができます。
なお、配偶者以外に相続人となるべき人がいない場合は、配偶者のみが相続人となります。

なお、配偶者といっても被相続人が過去に離婚した元配偶者は相続人にはなることはできません。
ただし、元配偶者との間に子どもがいた場合、その子は相続人(血族相続人)になることができます。
ちなみに、配偶者とは、民法で決められた被相続人の夫や妻であって、法律上、認められてない、いわゆる内縁の夫や妻(愛人)は該当しないということを注意しておきましょう。

何らかの事情で配偶者がいるのに内縁関係を続けている愛人がいる場合、この愛人にどうしても財産を分け与えたいということであれば、きちんと遺言書を書かなければ愛人に財産を分けることはできません。

このように法律上の配偶者が相続人として強い立場にあるのは、相続財産は被相続人と一緒に作り上げた財産であるという認識があるからです。

血族相続人には法定相続人になれる順番がある

一方、配偶者と異なり、血族相続人は誰もが法定相続人になれるわけではありません。
血族相続人には、法定相続人になれる「順位」が決められているのです。
その順番は次の通りです。

  • 第1位順位 ……直系卑属(子・子の代襲相続人<孫>)
  • 第2位順位 ……直系尊属(父母・祖父母)
  • 第3位順位 ……兄弟姉妹・兄弟姉妹の代襲相続人

優先順位としては、一番目が子どもや孫(代襲相続人)、二番目が父母、祖父母、三番目が兄弟姉妹や兄弟姉妹の子ども(代襲相続人)となります。

子どもは、摘出子と非摘出子で相続人になれるかどうかが決まります。
摘出子は、婚姻関係にある父母から生まれた子(実子)と養子を指します。

非摘出子とは、法律上の婚姻関係にない父母から生まれた子です。
非摘出子が相続人となるには、母子関係の場合、分娩したという事実を証明することが必要です。
一方、父子関係の場合、父親が「認知」していなければなりません。
この認知は、遺言によっても行えます。
生存中は、妻や子が反対して認知できなかった場合でも、遺言があると、選任された遺言執行者が、遺言書の謄本を添付して戸籍の届出をすることにより、認知することができるのです。

子どもがなくなっている場合には、相続人の子ども、つまり、孫へ相続権が引き継がれます。
これを「代襲相続」と言います。このことから、孫を「代襲相続人」と呼んでいます。
被相続人の子の代襲相続権には、何代先までという制限はなく、相続がされるまで続くのが特徴です。

自宅などの不動産を共有財産として子どもたちで相続する場合、問題が起きるのは、この代襲相続のケースです。
何代でも続くため、権利関係がどんどん複雑になっていってしまうのです。

被相続人に子どもも孫もいない場合は、被相続人の両親、祖父母が相続人となります。
両親や祖父母がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹の子(被相続人の甥と姪)に関しては代襲相続が続きますが、甥姪の子への代襲相続は認められません。