生前贈与のつもりが相続税の対象!? 名義預金と名義株のリスク

生前贈与のつもりが相続税の対象!? 名義預金と名義株のリスク

被相続人が、自分が亡くなった後に相続人が支払う相続税を軽くするために、

自分ではなく相続人の名義で預貯金をしたり、株を所有したりする話をよく耳にします。

しかし、『名義預金』や『名義株』は相続財産と見なされると相続税が発生するため、注意が必要です。

 

被相続人名義でなくても相続財産として見なされる

 

名義預金とは、自分以外の名義で作った預金口座のことです。

たとえば預貯金が1億円あり、そのまま相続財産にしてしまうと、

多額の相続税がかかる場合があります。

そこで一般的な相続税対策として、

贈与税がかからない最低限の範囲で生前贈与を繰り返す『暦年贈与』で、

相続財産を減らすという方法があります。

しかし、贈与契約書を作成するなど、暦年贈与であることがわかるようにしないと、

たとえ親が子どもや孫の名義で作った預金口座にお金を移していたとしても、

名義預金と見なされる可能性があります。

 

一方、名義株とは、株主名簿に記載されている株主ではない人が、

実質的な株主となって株を所有していることを指します。

たとえば、会社の株主名簿に相続人である社長の息子の名前に変更された記載がされているのに、

実際は息子には株の贈与を受けた認識がないようなケースです。

この場合、父親が亡くなったとき、株式の所有名義が息子だとしても、

その株式は相続財産として計上しなければなりません。

 

名義預金や名義株だと判断されないためのポイント

 

意図的に名義預金や名義株の状態にしてしまうケースもあれば、

本人は相続税対策のつもりだったものの、

名義預金や名義株の状態になってしまっていたということもあるでしょう。

お金・財産の流れが曖昧な形で相続対策をすることは、避けなければなりません。

 

特に気をつけたいのが、税務調査です。税務調査が入ったときに名義預金や名義株と見なされると、

相続税の課税対象になるだけでなく、追徴課税などのペナルティの対象にもなってしまいます。

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。

 

税務調査では細かい記載事項まで調べられるため、

「これは名義預金や名義株ではない」という証拠を出せるように準備しておく必要があります。

名義預金や名義株ではないという証拠を残すためにも、

贈与契約書を都度作成する、通帳には記帳を行う、株を譲渡したときには株主名簿を更新するなど、

書面として証拠を残しておくことが大切です。

また、届け印を名義人が普段使用しているものにしたり、

通帳やキャッシュカードを名義人本人が保管したりしておくことも有効です。

 

相続税の申告において名義預金や名義株は、

被相続人がほかの人の名前を借りて財産を保有しているに過ぎないと見なされます。

相続税の申告をした後で名義預金や名義株が発覚したときには、

税務調査が入る前に、速やかに修正申告の手続きを行いましょう。

 

 

金融商品の取引に税金がかかる! 3つの課税方式を知ろう

上場株式を売買したときや、投資信託の収益を現金化したときなど、

金融商品によって生じた利益は額面通りに受け取れるわけではありません。

取引によって得られた利益は所得とみなされ、税金が課されます。

3種類の課税方式について、知っておきましょう。

 

金融取引に関係する3つの課税方法とは?

 

金融商品に対する課税方法は、『源泉分離課税』『申告分離課税』『総合課税』の3種類があります。

順に説明します。

 

まず、源泉分離課税とは、ほかの所得と分離して、一定の税率で源泉徴収する課税方法です。

納税者自身が納税手続きをする必要はなく、

所得から、あらかじめ差し引かれた金額を受け取ることで納税が完結します。

たとえば、金投資口座・金貯蓄口座を売却して得た収益や、

外貨積立預貯金、預貯金の利子、為替差益(予約レートがある場合)などは、源泉分離課税の対象となります。

 

一方、申告分離課税とは、源泉分離課税と同様に、

給与や不動産などほかの所得と金融商品の所得を分離して納税する課税方法ですが、

納税者が確定申告を行うことにより、税金を納めます。

対象となるのは、株式の配当金、株式投資信託の分配金、公社債投資信託の分配金など、

配当所得のうち源泉分離課税をしない所得や、株式を売買して得た譲渡所得などが該当します。

源泉分離課税と申告分離課税の税率は、共に20.315%です。

 

3つめの総合課税は、ほかの所得と金融商品の所得を1年分まとめた金額に、一定の税率を課税する方法です。

税率は所得額に応じて決められています。

対象となるのは、給与や年金、不動産の家賃収入や労働以外で得た一時所得、

為替差益、副業の収入など雑所得に分類される所得です。

総合課税の場合は納税者が自分で確定申告を行い、算出された税金を納めます。

 

一般口座と特定口座 どちらを選ぶべき?

 

そして、金融取引をするうえでもうひとつ知っておきたいのが口座についてです。

株式や投資信託などの金融商品を売買するには、証券会社に口座を開く必要があります。

その際、『特定口座』『一般口座』のどちらかを選ぶことができます。

 

特定口座を開設すると、金融商品の売却益を証券会社が計算してくれます。

源泉所得税の計算も証券会社がしてくれるため、確定申告を自分で行うときも、用紙に記入すれば済みます。

ちなみに、特定口座には、源泉徴収まで行ってくれる口座もあるので、確定申告が不要になります。

確定申告に不慣れな人はこちらを選ぶとよいでしょう。

 

一方、一般口座を選んだ場合は、売却益や税金の計算を自分で行うことになります。

先述の通り、特定口座には源泉徴収までしてくれる口座もありますが、

所得金額などの状況によっては、確定申告をした方が節税できることもあります。

たとえば一年を通じて口座内の損益がマイナスになる場合、

確定申告をすることで源泉所得税が還付される可能性が高いです。

状況に合わせて口座を選び、手続きの方法を決めましょう。

 

 

相続の基本を再確認 相続人になれる人、なれない人

家族が亡くなって相続が始まると、調べなければならないことが多く発生します。

そのなかの一つ、財産を誰がどのくらい相続するのか?という問題は、残された家族を悩ませます。

万が一のときに慌てないよう、相続についての基本を押さえておきましょう。

 

覚えておこう!法定相続人の順位

 

民法上で定められている相続人のことを『法定相続人』と呼びます。

故人の配偶者は必ず相続人となり、そのほかの法定相続人は、

配偶者とともに次の順位で相続人となります。(先順位がいるときは、後順位は相続人になりません)

 

第1順位:子ども(相続開始以前に死亡しているときは、その直系卑属(子や孫など))
第2順位:父母や祖父母などの直系尊属(通常は父母が相続人になり、父母が両方死亡している場合は祖父母)
第3順位:兄弟姉妹(相続開始以前に死亡しているときは、その人の子)

 

このように、配偶者以外は相続を受けられる順位が定められています。

 

遺言書で相続人を指定できる ただし、遺留分に注意!

 

民法では、それぞれの法定相続人が財産のうち、どのくらいの割合を相続するかについても定めています。

ただ、被相続人によっては、財産承継に対して自分の意志を強く反映させたい人もいるでしょう。

そこで有効なのが、『遺言書』です。

遺言書に書き記すことで、相続人を指名してその相続分を決めることができます。

 

ここで注意したいのが、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して、

最低限の取り分を留保する『遺留分』という制度です。

たとえば「妻に財産の全てを相続させる」という遺言書を残したとしても、

子どもが遺留分を主張すれば、拒むことができません。

遺言書を書くときには、遺留分に配慮することが大切です。