土地を相続したけれど、何らかの理由で相続の前提の登記がされていなかったというトラブルは、
頻繁に起きています。今回は、登記未了のまま放置することで起きてしまった2つの困りごとを紹介します。
他人名義のままの物件は売却もできず相続人確定にも費用がかかる
よくあるトラブルとしてあげられるのは、
「土地を売ることになったのに売主名義にすることができず、売れない」というケースです。
●事例その1
父が亡くなり、息子は相続した土地を売ることに決めました。
しかし、登記簿謄本を取り寄せてみると、そもそも父の名義でもない、
全然知らない他人名義の状態になっていました。
父は「自分の土地だ」といっていましたが、契約書なども見つからず、
父が所有していたことを証明できるものがありません。
不動産会社に相談してみたところ、「他人名義の土地は仲介できない」と断られてしまいました。
所有者が分からないため売却はおろか相続登記をすることもできません。
●事例その2
先代が先々代から受け継いだ土地が、空き地のままずっと放置されています。
相続人であるAさんはその土地に家を建てて住みたいと考え、
土地の相続による所有権移転登記を司法書士に依頼しました。
ところが調べてみたところ、何代か前から相続登記がされておらず、
土地の相続人が20人以上に増えてしまっていることがわかりました。
司法書士からは、「手続きを進めることもできるかも知れませんが、費用が莫大にかかります」
といわれて途方に暮れています。
以上のように、土地を相続したものの、いざ所有者を調べてみたら、
相続登記の前提で必要な登記がされていなかったということは意外に多くあります。
相続登記未了の土地であっても固定資産税を支払う義務はある
土地に関する必要な登記をせずに放置すると、
相続人がこうしたトラブルに直面してしまう可能性があります。
相続人同士で意見が食い違い、話合いが進まない場合であっても、
面倒だからといって放置してはいけません。
次の世代の相続人がその土地を登記する必要が生じた際に、問題を処理しなければならなくなるからです。
土地の相続人が複数いて、話し合いが難しいとなったら、
裁判所にて、遺産分割調停や遺産に関する紛争調整調停など、相続に関する調停を申し込むこともできます。
しかし、こうした手間をかけさせないためにも、相続登記はきちんと済ませておくことが望まれます。
また、相続登記をせずにそのままにしておけば、
固定資産税の請求が来ないと考えている人もいるかもしれません。
しかし、相続登記をしていない土地については、
『現所有者』として相続人全員に固定資産税を納める義務があります。
もし、所有者が亡くなった後、相続人が不明で、
その土地に住んでいる人がいる場合は、『使用者』であるその人に納税義務が生じます。
登記には費用も手間もかかります。
だからこそ後回しにしないことです。
相続財産のなかに不動産がある場合は、早めに手続きを進めましょう。
「資産を現金で持っていると、インフレ(物価上昇)が起きた時に資産価値が目減りする」と聞き、
なんとなく不安に思っている方も多いかもしれません。
資産を守るには、インフレリスクの回避が大切です。今回は『インフレに強い資産』について解説します。
モノ・サービスの値段が上がると相対的にお金の価値が下がる
昨今ではガソリン・灯油といった石油製品のほか、
食品や建材、素材などの値上げが相次ぎ、話題になっています。
そもそもインフレ(インフレーション)とは、モノ・サービスの値段が上昇することで、
相対的にお金の価値が下がることをいいます。
今まで100円で買えていたリンゴが、150円になったと仮定してみましょう。
すると、100円にリンゴ1個の価値がなくなったことになります。
これが、『(実質的に)お金の価値が下がった』ということです。
ほかにも、政府がお金を大量に発行しすぎたために、お金の価値が著しく下がり、
インフレになってしまったという海外のケースも存在します。
いずれにせよ、移り変わりの激しい世の中において、『お金の価値』はいつも一定ではありません。
資産を守るためには、インフレ対策も重要なのです。
やや脇道にそれますが、インフレに対して『デフレ(デフレーション)』という言葉も存在します。
これは、モノの値段が下がり、相対的にお金の価値が上がることをさします。
日本は長らくデフレであるといわれているため、
インフレ対策と聞いて「ピンとこない」と思った方も多いかもしれません。
しかし、最近になって状況は変わりつつあります。
新型コロナウイルス感染症からの経済回復期待により、
世界的にインフレの高進を懸念する声が高まっており、日本も例外ではないのです。
大切な資産を守るためにも、このタイミングで資産のポートフォリオを見直したほうがよいかもしれません。
インフレリスクに強い資産は?有価証券や現物投資など
では、インフレリスクに強い資産には、どのようなものがあるでしょうか。
一般的に、最初に検討されるのは株式です。
インフレ下では物価が上昇するため、その分だけ企業収益が増加します。
その結果、株価も値上がりするので、財産が目減りすることは避けられます。
ただし、インフレ下で企業の業績自体が悪化する可能性はあるので、その点は考慮が必要です。
また、価値が下がりにくいといわれているのが、不動産や金(きん)などへの『現物投資』です。
金には『金そのものの価値』があるため、安全な資産という認識が高く、
インフレ対策としては手堅い選択肢であるといえます。
不動産はインフレに連動して資産価値が上がるため、購入時よりも高い価格で売却できたり、
高い賃料で貸し出せたりする可能性があります。
インフレリスクに備え、一度、手元にある資産の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
いつか経験する『相続』について、よくわからないと感じる方もいるかもしれません。
相続は民法で決まっている点が多いため、時間があるときに基本を押さえておくことが大切です。
そこで今回は、相続できる人や相続財産の配分など相続の基本について解説します。
相続する人と財産の配分は民法で決まっている
相続とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産を被相続人の配偶者や子などが引き継ぐことをいい、
誰(相続人)にどのくらいの配分(法定相続分)で分割されるのかは民法により定められています。
遺言書が無い場合、その分け方については、相続人全員による『遺産分割協議』で決定します。
必ず相続するのは配偶者で、その他は、配偶者とともに、
第一順位・子、第二順位・親、第三順位・兄弟姉妹の順位で相続人になります。
配偶者と子以外は、先の順位の人がいる場合相続できません。
また、本来なら相続人となる子や兄弟などが亡くなっている場合は、
被相続人の孫や甥・姪に相続権が移転(代襲相続といいます)します。
一般的には、遺言書があれば遺産分割協議は必要なし
基本的に相続の手続きは遺産分割協議を経て進めていきますが、
遺言書がある場合はその内容が優先されます。
自筆証書遺言であれば、自分で用意した紙とペン、印鑑があれば、
誰でも作成できますし、費用もかかりません。
ただし、被相続人本人が作成した場合、法律の知識不足により遺言書が法的に必要な要件を満たしておらず、
無効になるケースもあるので注意が必要です。
また、自筆のほか、公証役場で作成する公正証書遺言もあります。
公証人が法律に準じて公正証書を作成するため、書き間違えのない有効な遺言書を確実に作成できます。
相続は突然起きることが多いものです。スムーズに行えるよう内容を理解しておきましょう。