遺言書が見つかり、遺産分割の方法が提示されていれば問題ありませんが、遺言書がない場合や遺言書の遺産分割内容に納得できない場合は、相続人同士が話し合って遺産分割協議を行います。
遺産分割協議で遺産分割の方法が決まればよいのですが、遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停や審判を申し立てることになります。
遺産分割調停や審判になれば、弁護士を雇う必要もでてきますし、費用だけではなく、手間と時間がかかります。
相続人同士がさらに不仲になるなどのデメリットも非常に大きいので遺産分割調停にならないように、遺産分割協議をしっかりと行うことが必要です。
遺産分割協議は原則として相続人全員が集まって、財産をどのように分けるのかを話し合う場になります。
遺産分割協議の最終ゴールは、遺産分割協議書の作成です。
遺産分割協議書とは、遺産の分割方法とその結果を記したもの。
遺産分割協議書がないと、凍結された銀行口座の解除はできませんし、土地の名義変更するための登記もできません。
非常に重要な書類なのです。
遺産分割協議書は、相続人全員で作成するため、相続人の一人でも反対すれば成立はしませんし、特定の相続人だけを除外して協議書だけを作成しても遺産分割協議書としては無効になってしまいます。
遺産分割協議書の書式は、基本的に自由です。
パソコンで作成することもできますし、手書きで作成することもできます。
協議書には相続人全員の自署での署名と押印が必要で、印鑑証明を添付する必要があります。
なお、相続人全員が遺産分割協議に参加することが難しいということであれば、同一内容の遺産分割協議書を人数分作成して、それぞれの相続人に郵送することで対応することができます。
そして、書面に記載された分割内容に納得すれば、署名押印をして返送するという手順となります。
注意すべき点は遺産分割協議にも原則的にタイムリミットがあるということを意識しなければなりません。
相続がスタートしてから10カ月後には相続税の申告期限が訪れます。
ですので、相続した遺産に相続税がかかるのであれば、申告期限までに納付しないと様々なペナルティがあるので気をつけましょう。
また、申告しなければ相続税の節税のための特例を受けられなくなります。
ただし、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらなければ、未分割として相続税申告をすることもできます。
その際には一旦、相続財産に対する相続税を納める必要があります。
負担する相続税が莫大で納税資金を捻出するのが難しければ、早めに遺産分割協議を行って、遺産を分割するように手続きをするほうがよいのです。
遺産分割協議で揉めるケースでよくあるのが、遺産分割協議を行わず、書面の返送で済まそうとする相続人がいるということです。
よくあるのが、相続税の申告期限ギリギリになって、長男など財産を管理している相続人から、一方的に遺産分割協議書を送りつけられ、署名や押印をして欲しいと伝えられることです。
その際、財産を管理している相続人の言い分としては、莫大な相続税がかかるので、仮に申告するために、とりあえず遺産分割協議書に署名と捺印をして欲しいというものが多いです。
前述したように遺産分割協議書は、相続人が遺産の分割の方法に納得したことを正式に記すための書類です。
ですから軽々しく署名押印をしてしまうことで、紛争の原因になってしまうこともあるのです。
遺産分割協議がまとまらなければ、調停や審判となります。
調停とは裁判所の調停委員が争っている当事者の間に入って、各々の事情を聞き、アドバイスをしながら解決を図るための制度のことです。
相続の争いは家庭裁判所で調停が行われます。
当事者を一人ずつ調停室に呼び出し、調停委員2名が事情を聞き、遺産分割をスムーズに行うための意見交換をしながら合意点を探っていきます。
調停では裁判の事例が紹介されたりして、多くの場合は調停での話し合いによって解決をします。
それでも不成立という場合は、自動的に「審判」になります。
ちなみに、審判とは、家事審判官が遺産分割について、各相続人の年齢や職業、心身の状態やその他の事情を考慮したり、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の行った調査の結果など種々の資料に基づいて判断を決定したりする手続きになります。
審判になれば、弁護士を雇う必要が出てきます。
弁護士費用は紛争性の度合いによって費用に差が出てきますが場合によっては遺産総額の1割以上、取られることもあるようです。
泥沼の争続にならないように、遺産分割協議で何とか相続の手続きを終わらせたいものです。