相続で節税しやすい財産は不動産です。
不動産は所有形態や形状、用途によって評価が大きく変わります。
そうした不動産の性格を活用して不動産の評価を下げるのが節税のポイントになります。
不動産の評価額は相続においては、土地は路線価方式などで計算した価格なり、建物は固定資産税評価額×1.0、つまり固定資産税評価額と同じ額ということでした。
ところが、土地のアパートや貸家を建てると、建物については、他人の居住用としてみなされ、借家権のついている建物として3割評価が下がるのです。
これは全国一律の割合です。
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の建物を相続したとします。
アパート、賃貸等の建物の評価額は、固定資産税評価額×1.0×(1-30%)ですので、2,000万円×1.0×(1-30%)となり、相続税法上、建物は1,400万円の評価となります。
もちろん、評価減は、建物だけではありません。
アパートや賃貸の土地も、他人が居住している建物の敷地「賃家建付地」とみなされて、更地評価額から借地権割合と借家権割合(30%)を乗じた率を控除して、計算されることになっています。
たとえば路線価で2億円の価値のある更地に、借地権割合60%、借家権割合30%のアパートを建てた場合の土地の評価を計算してみましょう。
アパート、貸家等の敷地の評価額=更地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)になりますので、2億円×(1-0.6×0.3)=1億6,400万円となります。
借家権割合は全国一律30%ですが、借地権割合は、土地によって変わるので、路線価図を見て確認し、計算します。
借地権割合は「100A」「200C」のように路線価のあとに付属するアルファベットで表されています。
アルファベットが借地権の割合を示しています(A=90%、B=80%、C=70%……)。
では、アパートの敷地の一部を駐車場として整備した場合、駐車場の土地の評価はどのように計算することになるのでしょうか。
相続対策となる土地の相続税額は、原則その土地の利用単位ごとに評価します。
つまり、アパートの敷地に駐車場があっても、基本的には賃貸アパートの敷地は貸家建付地として評価し、駐車場は別の土地として評価します。
ただし「その駐車場の利用者がすべて貸アパートの賃借人である場合」は別で、「その敷地全体を貸家建付地」として評価されます。
貸家建付地となれば通常、更地の70~80%の評価額となり、税制上かなり有利な評価を得ることができます。
逆に言えば、その駐車場にアパートの住人以外の人が1人でも駐車契約していると、評価上不利になるので注意が必要です。
それでも、アパートの住人以外に駐車場を貸したい場合は、土地の利用単位をきちんと区切るということです。
たとえば、駐車場のすべての敷地を住人と住人以外の人で利用させるのではなく、駐車場Aをアパート住人専用、駐車場Bを外部専用とするのです。
AとBの間はフェンスなどでしっかりと間仕切りがしてあれば、相続税、固定資産税ともアパートと一体とみなされ、節税が可能です。
ただし、AとBの間を線で引いただけで、進入路なども同じであるならば、税務署から否認される可能性が大きいと思います。
被相続人が建物の修繕をして節税する方法もあります。
修繕を通じて相続財産を減らすことができれば、結果的に節税対策になるのです。
たとえば、傷んだ自宅の修繕費、改築費に1,000万円をかければ、かけた分だけ相続財産を減額できます。
もちろん、建物は使い勝手が向上するため、建物の価値が上昇し、固定資産税評価額が上がる場合もあります。
しかしながら、1,000万円の工事費がかかっても、単純に価値が1,000万円増にはならず、工事費の50~70%の上昇で済むことがほとんどです。
このように、被相続人が亡くなったあとに、売却目的などで修繕を予定しているのであれば、被相続人が生きているうちに済ませておくことは、有効な節税策になりえます。
同じように、山林や大きな土地などを持っている場合は、土地の実測や樹木の伐採、整地や造成も生前に行っておくといいと思います。
作業にかかる費用は、使わなければそのまま相続財産として課税の対象になりますが、生前に使えば、それだけ相続財産を減らすことができます。
その結果、整備や造成された土地は、市場価値が高まるため実勢価格での売却しやすくなります。
しかし、売却しやすくなったからといっても、相続税は路線価で評価をするので、価値は整備や造成前と変わりません。
これは土地の市場価格を挙げながら、相続税を合法的に節税できる方法の一つになります。