遺言で「誰に何を継がせるか」を決めても、法律で保障された最低限の取り分である「遺留分」を侵害していると、後に相続トラブルへ発展するおそれがあります。今回は、遺言の実効性を高め、円満な相続を実現するための「生命保険」の活用術を解説します。
「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律で保障されている、最低限の遺産の取得割合のことです。遺言書を使えば、遺言者は自由に遺産分割を指定することができますが、たとえば「長男に全財産を相続させる」といった極端な内容の場合、ほかの相続人は自身の遺留分を侵害されたことになります。
この場合、ほかの相続人には、侵害された額を金銭で請求できる「遺留分侵害額請求権」が認められています。
そのため、遺留分に配慮しない遺言書を遺すと、次のような金銭トラブルに発展しかねません。
①原則として現金払い
不動産など現物を相続した場合でも、遺留分の支払いは相続した現物を返還するのではなく、金銭で行う必要があります。
②資産の切り売り
手元に現金がない場合、相続した自宅や株などを売却し、支払いに充てる事態に陥ります。
③感情の対立
「遺言のとおりにしただけなのに、なぜお金を払わなければならないのか」という不満が生じ、親族関係に深い亀裂が入ります。
このような遺留分をめぐるトラブルを防ぐために、極めて有効な手段となるのが、生命保険の活用です。主なメリットは次の3点です。
①「受取人固有の財産」となる
生命保険金は、原則として受取人自身の固有の財産となり、遺産分割や遺留分算定の対象(基礎財産)に含まれません。そのため、特定の相続人に多くの財産を手渡すことができます。
②支払い原資の確保
相続財産を多く継がせたい相続人を生命保険金の受取人に指定しておけば、万一ほかの相続人から遺留分を請求されても、その保険金をそのまま支払いに充てることができます。
③不動産のスムーズな承継
実家などの不動産を特定の相続人に引き継がせたい場合、あわせて生命保険金を活用しておくことで、不動産を売却することなく遺留分問題を解決できます。
ただし、注意点もあります。まず、遺留分侵害額請求を受ける可能性がある相続人(たとえば自宅を継ぐ長男など)を受取人に指定しておくこと、また、健康状態によっては生命保険への加入がむずかしくなるため、元気なうちに遺言書の検討とあわせて進めるのが鉄則です。
遺言書は「遺したい想い」を伝えるものであり、生命保険はそれを実現するための「実行力(資金)」を担保するものです。大切な家族が困らないよう、セットでの対策をおすすめします。