2,500万円までの贈与は非課税の制度

2,500万円までの贈与は非課税の制度

相続時精算課税制度は、生前の贈与に2,500万円までの特別控除を認める制度です。
その名の通り、被相続人が亡くなったときに、生前贈与分と亡くなったときの財産を合算して相続税を計算するというものです。
つまり、実質的な節税効果はゼロです。
贈与税が相続時まで「延納」される仕組みと考えてよいでしょう。

相続時まで贈与税が延納される制度

この課税制度が活用できるのは、相続財産が基礎控除を下回り、相続税を支払う必要がないと見込める場合のみです。
とはいえ、現状では相続を受けた人の4%が税金を支払っている計算になるので、100人のうちの96人は、相続時精算課税制度を利用すれば、相続税を払うことなく、贈与税も払うことなく、次世代に大きな金額の贈与ができる、ということになります。

なお、相続時精算課税制度では、贈与をする人ごとに2,500万円までの特別控除を認めるとされています。
これはつまり、父親が2,500万円の特別控除を持っているだけではなく、母親も2,500万円の特別控除があるということ。
合わせて5,000万円の贈与を受けても贈与税がかからないということになります。

また、この制度には、親が65歳以上、子が20歳以上という制限がありますが、住宅資金の贈与に使う場合は、ある条件を満たせば親の年齢制限がなくなります。
そのため親が子に住宅資金の頭金などを提供する場合によく使われます。
住宅が動けば、車、家電、インテリアなど他の消費財のマーケットが活用化します。
親から子の世代への贈与をスムーズにするとともに、消費全体を早期に活性化しようという国の経済施策でもあるのです。

ただし、この制度を選択すると、贈与税の110万円の基礎控除を受けられなくなります
毎年110万円にするか、一度に2,500万円にするか、その点はきちんと見極める必要があるでしょう。

相続時精算課税を利用して多く税金を払うこともある

ケースによっては、この制度を利用することで税金を多く払う場合があります。

たとえば、子が、親と一緒に住むために、5,000万円の一戸建て住宅を購入するとしましょう。
このとき、親から2,500万円の贈与を受ければ、親が亡くなったとき、この2,500万円に対して相続税がかかります。

一方、同じ5,000万円の物件を親子で購入し、共有名義にしていたらどうでしょうか。
死亡時に所有していた財産は、5,000万円の物件のそれぞれの持ち分になり、土地はおおよそ80%、建物は60%で評価されるので、2,500万円より低い金額に対して税金がかかり、結果的にこの制度を利用しないほうが節税になるわけです。

贈与する人1人につき、総額2,500万円までなら、複数回に分けて贈与することも可能ですが、2,500万円を超えた部分の金額には、一律20%の贈与税がかかるので注意が必要です。

もちろん、相続時までに負担した贈与税は、相続時に相続税から控除されます。
相続税の申告時に、相続開始時まで納付した贈与額のほうが相続税より多かった場合には差額が還付されます。
子世代が住宅を購入するにあたって、この制度を利用するかどうかを検討するときは、親に頭金を負担してもらった場合に減る利子額を計算してみるといいでしょう。
場合によっては1,000万円以上の利子を減らせることもあるので、そのことを親と相談したうえで、検討してみるといいと思います。

将来、資産価値が上がりそうな収益物件の贈与には、節税効果あり

相続時精算課税の節税効果はゼロといいましたが、将来、資産価値が上がりそうなものを贈与するときには節税効果を発揮します。
たとえば、アパートなどの収益物件を贈与するなどです。

子どもが収益物件を贈与されると、家賃収入を得て、これを蓄えることができます。
収益物件を贈与しなければ、家賃収入は親の財産として蓄積されていくことになり、相続時には相続税がかかります。
将来の財産を、前もって分散させることで、相続対策になるわけです。

たとえば、相続時精算課税制度を利用して、現金を1億円贈与した場合と、同じ金額でアパートを建築して、それを贈与した場合との贈与税額を比較してみましょう。
建築したアパートの固定資産税評価額は7,000万円、借家権割合は30%とします。

1.現金1億円を贈与する場合

(1億円-2,500万円)×20%=1,500万円
(現金-非課税枠)×税率

2.アパートの建物を贈与した場合

{7,000万円×(1-0.3)-2,500万円}×20%=480万円
{固定資産税評価額×(1-借家権割合)-非課税枠}×税率

現金では1,500万円かかる贈与税が、アパートを贈与すれば480万円になり、差額の1,020万円が節税できたことになります。
さらに、このアパートが月額10万円の家賃で20部屋あった場合、月額収益は200万円となり、およそ2.4カ月分の家賃で贈与税を納税できる計算になります。

それ以外の家賃収入は、子世代に蓄えられ、生活を安定させるだけでなく、将来の相続税の支払いにあてることができます。
相続財産に不動産がある場合、このように収益性の高い物件を、相続時清算課税を使うなどして早朝に贈与し、一方で、収益性の低い物件はなるべく早い段階で処分しておくことが節税や納税のポイントです。

相続について、気になることや悩んでいることがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

相続や事業承継に関する情報をメールマガジンにて配信しております。

新聞や雑誌に載らない、現場で起こった事例など、相続対策の豊富な経験や、知っておくと安心できる情報を多数ご紹介しております。
登録料・月額費用は無料です。
購読ご希望の方は  まで、お名前とメールアドレスを送ってください。

メールマガジン例